
「社長Talk」再開から2年。パーソナリティ藤沢氏に聞く、社長の素顔を引き出すインタビュー術
毎週さまざまな分野の社長をゲストに招き、トップリーダーの経営哲学、人生哲学に迫る、ビジネスパーソン向けのラジオ番組「藤沢久美の社長Talk」。2006年から17年にわたって続いてきた人気番組です。
コロナ禍が続いていた2020年、番組が一時休止していたタイミングで、番組パーソナリティの藤沢さんにM&Aクラウドの執行役員・岡道 俊人が突撃したことから、パートナーシップがスタート。2021年5月末から、M&Aクラウドの提供により、Voicy上でのラジオ配信が始まりました。
藤沢さんのライフワークともいえる番組が再開して2年。事務局を担ってきたM&Aクラウドにとっても、100人を超えるゲストたちとのネットワーク形成につながっており、Win-Winのパートナーシップを深めてきました。
今回は、コラボレーションの開始から2周年を記念し、藤沢さんと岡道が裏話を交えつつ、「社長Talk」からの学びを語り合った対談をお届けします。上場企業の社長を中心とするゲストたちの共通点と意外な素顔、通算17年のパーソナリティ経験で磨き上げたインタビュー術など、ラジオ本編では聞けない話が満載ですので、ぜひご一読ください!
■「藤沢久美の社長Talk Presented by M&Aクラウド」は、下記のVoicyページからお聞きいただけます
■2周年を記念したプレスリリースもご覧ください
藤沢久美氏プロフィール
国内外の投資運用会社勤務を経て、95年に日本初の投資信託評価会社を起業。99年、同社を世界的格付け会社スタンダード&プアーズに売却後、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画し、2013年から22年3月まで代表。
07年には、ダボス会議を主宰する世界経済フォーラムより「ヤング・グローバル・リーダー」に選出。08年には、世界の課題を議論する「グローバルアジェンダカウンシル」のメンバーにも選出され、世界40カ国以上を訪問。
政府各省の審議委員、日本証券業協会やJリーグ等の公益理事といった公職に加え、しずおかファイナンシャルグループなど上場企業の社外取締役等も兼務。
自身の起業経験を元に、NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」のキャスターとして、全国の中小企業の取材を経験後、国内外の多くのリーダーとの交流や対談の機会に積極的に参画し、取材した企業は2000社を超える。
「徹子の部屋」に迫る通算17年。社長たちの“信念”と“楽観性”をパワーに

――リニューアル後、約100人の社長においでいただき、特に上場直後のタイミングで来てくださった方が多いですね。起業家にとっての憧れの存在だと思いますが、何か皆さんに共通する点はありますか?
岡道:皆さん、個性的という印象が強いので……共通点はなかなか挙げづらいですね。
藤沢:一つ挙げるとすれば、楽観性でしょうか。自社のビジョンが実現することを無条件に信じている人が多いと感じます。
特に印象的だったのは、環境負荷の低いマイクロ波技術を活用した事業を実現された社長のお話です。大学発の技術で、実験室レベルではすでに成功していたものの、量産の実績がないから企業が協働してくれない。実用レベルの装置をつくるためには、数十億レベルのコストがかかる。出資してくれる投資家を何年も探し続け、結局、自社で工場を建設して量産技術を証明し、事業化に成功されました。自分たちの技術の可能性を信じた結果ですね。
環境問題への関心もまだ今ほど高まっていない時期で、ニーズの面でも見通しは立っていなかったと思うのですが、「今後、絶対に必要とされる技術だから」と。その後、時代が追い付いて、今では上場もされています。
――「信じる力」が強力なんですね。
藤沢:私自身、投資信託評価会社を立ち上げた経験があるので分かりますが、自分のつくったプロダクトやサービスはかわいいんですよね。なかなか理解してくれる人に出会えなくても、内心は「この子はいい子。きっと分かってくれる人がいるはず」と思っている。というか、そうとしか思えないんです。
岡道:私も仕事でお世話になった経営者の方々と親しくさせていただいているので、よく分かります。皆さん、驚くほどパワフルで、その根底には強い信念を持っていらっしゃる。
藤沢:お話ししていると、元気をもらえますね。私が「社長Talk」を通算17年続けてきたのも、ひたすら楽しかったからです。
――もはやラジオ界の「徹子の部屋」のような存在ですね。「徹子の部屋」は収録後に編集をしないことで知られていますが、「社長Talk」はいかがですか?
岡道:ほぼ収録そのままです。かなり突っ込んだ話をしてくださる方も多いですが、収録後に「カットしてほしい」と言われることは、ほとんどありません。
一度、番組最後に必ずお聞きしている、「社長にとってM&Aとは?」の質問に対して、「会社の成長につながるのであれば、当社自身がM&Aされても構いません」と言い切られた方がいて、私たちもびっくりして(笑)。さすがにこちらで配慮して、先方の広報と相談のうえでカットしましたが、ご本人は「そのまま流してくれていいですよ」と。
藤沢:よく覚えています。ご自身のことよりも、会社の成長を一番に考えるスタンスがすてきでした。
岡道:その方に限らず、M&Aに対しては、買う/買われるというよりも、「お互いに足りないところを補い合いたい」というフラットな感覚を持っている方が多いと感じます。
――当社が提唱している「成長戦略としてのM&A」にも通じる感覚ですね。それにしても、編集なしということは、毎回40分くらいの収録で、あれだけ濃いエピソードが出てくるのですね。
藤沢:基本、「事業内容」「生い立ち」「今後の展開」の3部構成でインタビューしています。面白いのは、子ども時代がだいたい2パターンに分かれるんです。将来、社長になると思っていたパターンと、あまり考えていなかったパターンですね。
後者の中には、アルバイトで10回くらい転職を繰り返したという方もいて、「これはご両親は心配で仕方がなかっただろうな」と。ただ、一見、人生に迷っているように見える時期も、ご本人の中では何かを模索され続けていて、それが全て糧になっている。そして、ある瞬間にパチッとスイッチが入ると、後はすごい勢いでやるべきことに邁進していかれる。だから、よく言われる「自分探し」は、きっと見つかるまで続けていていいのでしょうね。
岡道:むしろ「自分はこれでいいのだろうか」という疑問を持ち続けることが大事なのかもしれませんね。本当にやりたいことに出会った人のパワーを目の当たりにすると、人間のポテンシャルってすごいんだなと。私もいつも勇気をいただいています。
「次の質問は考えない」。ゲストのノリを1ミリずつ上げるインタビュー術

――ゲストの中には、ラジオ出演などには慣れない方も多いと思いますが、皆さん、楽しそうにお話しされていますね。
岡道:スタジオに入ってきた時点では、緊張されている方も多いですよ。
――アイスブレイクに秘訣があるのでしょうか?
岡道:久美さんは何といっても人脈が広いので、ゲストと共通の知り合いがいることが多いんです。「取締役の〇〇さんにお世話になっています」とか「〇〇教授と先日お食事しました」とか。その一言で、皆さん一気にほぐれますね。
藤沢:今日のように、私自身がインタビューを受ける機会もあるので、ゲストの気持ちを想像するようにしています。私がインタビューされて特に楽しかったと感じるのは、自分では気づかなかった自分の発想や観点を引き出してもらえたときです。「社長Talk」のゲストにもそう感じてもらえるよう、本人が乗っているトピックをどんどん深掘りしていきます。
――インタビュー前に相当準備をされるのでしょうね。
藤沢:もちろん予習はしますし、インタビューのヤマ場についても仮説は立てます。でも、本番前にはいったんすべてを捨て、まっさらな状態で臨んでいます。お話を聞いている間はとにかく集中して、次の質問は一切考えません。
――次の質問を考えない……そんなことができるものですか?
藤沢:相手の話に100%集中していれば、いい質問は自然に出ます。次の質問を考えていることは相手には見えるんですよ。「今、聞いてもらえてないな」と感じると、せっかく乗っていた気持ちが落ちる。1ミリでも落としてしまったら、インタビュアーとしては失敗ですよね。むしろ、1ミリずつ上げていかなければ。
岡道:事前にシナリオをつくるよりも、その場の瞬発力を大事にした方がよいというのは、営業の面談でも同じです。久美さんの集中力の強さは、スタジオで聞いているとビンビン伝わってきます。
――毎回さまざまな業界の社長をお迎えし、かなり専門的な話が出ることもありますが、藤沢さんの合いの手のおかげで、難しい内容も理解しやすくなっている印象です。
藤沢:私にとっては「社長Talk」自体が、あらゆる業界の基本構造を学べる場です。IT系のサービスについては新たに学ばなくてはいけない部分も大きいですが、意外と工程管理のやり方が製造業と似ていたり。業界は離れていても、人や会社が連携して事業を成り立たせるための知恵というものは自ずと似てくるようです。
ゲストの中でも、特にスタートアップの経営者は、自分たちの事業内容をなかなか世の中に理解してもらえないと感じている人が多いのだと思います。インタビューの冒頭で「こういうビジネスですよね?」と私なりの理解をお伝えすると、とても喜んでいただけます。
岡道:スタジオで聞いている先方の経営企画や広報の方が驚くほど、熱を込めてお話しくださる社長も多いですね。
藤沢:インタビュー中の私は、もうゲストが大好きで、その方のすべてを知りたい。超集中状態になっているので、我に返ると詳細を思い出せないときもあるんですけど(笑)。でも、脳のどこかにはしまわれているのでしょうね。別のインタビューでまた集中状態に入ったときに、ふと出てくることがあります。
岡道:それがきっと、ゲスト同士の間を取り持つ発想にもつながっているのですね。
歴代ゲストが集うカンファレンスも構想中。社長同士の学びの場に

――それは収録後の話でしょうか?
岡道:そうです。私も収録後、ゲストを訪問させていただく機会があり、そうした際に「ラジオ出演できたこと、久美さんとお話ししできたことも嬉しかったけれど、久美さん人脈のおかげで思ってもいなかったご紹介までいただけた」と感激されている方が多いんです。
藤沢:私、根がおせっかいなんですよね。ゲスト同士を紹介することもありますし、自分が社外取締役をしている会社、関係のある会社におつなぎすることもあります。事業連携がスタートしたり、お互いに投資し合う関係になったりした例もありますね。
岡道:M&Aクラウド自身も、久美さんを介して銀行をはじめさまざまな企業に紹介いただき、本当に感謝しています。スタートアップにとっては敷居の高い大企業に紹介いただけるのは、貴重な機会ですよね。
藤沢:大企業側も今、事業の幅を広げるためにスタートアップとの出会いを求めていますから。もちろん、紹介してもNG回答を頂くケースもありますが、その場合にはNG理由を伺い、スタートアップ側に共有するようにしています。
岡道:久美さんは投資家の顔もお持ちなので、単なるインタビュアーというよりも、メンター的な視点でゲストに関わられているのでしょうね。
藤沢:事前に資料で予習したうえでインタビューしてみると、「もったいないな」と感じることがよくあります。すごく面白いことをしているのに、IR資料ではそこに触れられていなかったり、専門的すぎて伝わりづらい書き方になっていたり。収録中はできるだけ面白さが伝わる話をご本人から引き出すように心がけ、収録後に資料の見せ方についてアドバイスさせていただくこともあります。
岡道:収録後はゲストも緊張が解け、本番以上に盛り上がることがありますね(笑)。この時間帯をスタッフ内で「余韻」と呼んでいるのですが、ここのエッセンスも今後何らかの形で発信していければと思っています。
――3年目以降のラジオ運営に向けて、抱負をお聞かせください。
岡道:毎回、勉強になるインタビューばかりなので、まずはリスナーの幅をもっと広げていきたいです。配信メディアを増やし、スマホでの聴取がよりしやすい形にすることも検討しています。
藤沢:私は「社長=未来をつくっている人」だと考えています。特に「社長Talk」によく登場いただく上場間もない社長たちは、新時代をつくっていく人ですよね。今、DX、DXと言われる中で、何をすべきか悩んでいる方も多いと思いますが、ゲストたちのお話を聴いていただければ、きっと何かのヒントが得られると思います。
岡道:ようやくコロナが収まってきたので、リアルイベントもやりたいと思っています。「社長Talk」の歴代ゲストを招き、社長同士の横のつながりから、学びが生まれる機会にできたら面白いだろうなと。久美さんにモデレーターになっていただいてカンファレンスをしたり、メタバース上での配信にも挑戦したいですね。3周年を迎える前には実現させるつもりで、構想をふくらませています。
――「社長Talk」を核にしたネットワークがどんどん広がっていきそうですね。本日はありがとうございました。
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