M&Aクラウドスペシャリスト陣が選ぶ起業家のためのファイナンス本5選
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M&Aクラウドスペシャリスト陣が選ぶ起業家のためのファイナンス本5選

普段、「M&Aクラウド」の取材で掲載企業の方々にお話を伺う中でも、特に個性派が多いのが創業経営者の皆さんです。インタビュー中にも新たなビジネスアイディアがわいてきて、事前に用意された資料からどんどん脱線していく場面もしばしば(笑)。その熱量に圧倒されつつ、毎回刺激をいただいています。

今回は、そんな偉大な起業家を目指す皆さんを対象に、当社の起業経験者、および起業家のサポート経験が豊富なメンバーから、おすすめ本をご紹介します。テーマは「起業家に必要なファイナンスの基礎知識を学べる1冊」。決して財務のスペシャリストを目指すわけではなくても、企業トップとして、CFOや株主とコンフリクトする局面で、ファイナンスについて知っておくことはとても重要です。そんな皆さんのために、当社スペシャリスト5人がそれぞれベストと思う1冊を選んだところ、「起業のバイブル」から漫画まで、バラエティ豊かなラインアップがそろいました。ぜひ興味を持った1冊から、読んでみてください。

①MACAP事業本部長 村上のおすすめ
「起業のファイナンス」

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スタートアップ関係者が読むべきエクイティファイナンスの入門書として最適な一冊。いわば起業家、投資家のバイブルです。著者の磯崎氏はベンチャーキャピタル、フェムトパートナーズのゼネラルパートナーを務めており、現在もスタートアップ投資の最前線で活躍しています。

「なぜスタートアップにはファイナンスが必要なのか?」というそもそも論から始まり、事業計画や企業価値の考え方、ストックオプションや優先株式の設計を踏まえた資本政策の策定、ベンチャーキャピタルとの付き合い方など、ファイナンスに必要なエッセンスが凝縮されています。易しくカジュアルな語り口で書かれているため、初学者でも読みやすく、かつ体系的にファイナンスを学ぶことができます

ちなみに、起業前に最低限のファイナンスのナレッジを習得しておくことは、起業時または起業後にエクイティファイナンスを実行する際、投資家に主導権をとられないようにするためにも大切です。特にファイナンスに慣れていない事業会社やモラルの低い投資家から出資を受けた場合に、思わぬ落とし穴が待っていることがあるからです。

たとえば、シード~アーリーの段階で34~51%といった大きなシェアを持たれてしまうと、その後の経営の自由度が下がったり、その次のファイナンスの難易度が上がってしまうことにつながります。また、株価の設定や希薄化の問題以外にも、起業家側が契約条件の交渉ができるだけの知識を身に付けていない場合、極端に投資家に有利な契約条件で進められてしまう可能性もあります。

資本政策は不可逆」とよく言われますが、一度株式を発行してしまうと、買い戻しのハードルはかなり高いです。スタートアップにおいてファイナンスは事業成長に欠かせないツールである一方で、ファイナンスの実行には多大な労力や時間を要するうえ、失敗した時のダメージも相応にあります。ファイナンスの失敗によって本来の目的である事業が頓挫することがないように、また事業のアクセルを踏みたいタイミングで、株主との関係で苦労するような展開にならないように、ぜひ早い段階で本書を読んでおくことをおすすめします。

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執行役員CFO MACAP事業本部長 村上 祐也
東北大学工学部卒、東京大学大学院新領域創成科学研究科修了。公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。
新卒で野村證券株式会社へ入社。インベストメント・バンキング部門にて、インダストリアルズやコンシューマー、ヘルスケア業界の企業に対するM&AやIPO等の提案やエグゼキューションに従事。
2019年1月にM&Aクラウドへ入社。M&Aクラウドでは数億円〜十億円超の資金調達やM&Aを手がける一方で、M&Aアドバイザリー事業部の立ち上げを担当し、事業の拡大に伴い、2021年2月にM&A Cloud Advisory Partners(MACAP)事業本部を設立。

②公認会計士 齋藤のおすすめ
「会社売却とバイアウト実務のすべて」

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起業をすると、いつかはM&AやIPO等により、経営を移譲する、あるいは株主還元を図るタイミングが来ます。M&AかIPOか――多くの経営者が悩む場面ですが、本書の第一部に掲載されている、判断のためのフローチャートは秀逸です。会社をどうしていきたいかだけでなく、経営者自身がどんなキャリアを歩みたいかという視点も盛り込まれており、いろいろな角度から頭の整理ができると思います。

私が過去にアドバイザーを務めた案件でも、経営者の方が「今、会社を売却することが本当に正解なのか?」と迷われたケースがありました。私から、まさに本書のフローチャートのように、「IPOを検討したことは?」「売却するなら、どんな企業と一緒になりたい?」といった質問を重ねるうちに、「経営者としてのキャリアを考えると、一度大企業のもとで仕事をして経験値を高めたい」という本人の思いが明確になり、上場企業への売却を決意。M&A後は、買い手企業のオーナーとの相性もよく、業績も好調とのことで、双方にとって納得感の高いM&Aになったようです。

本書第二部では、経営者がM&Aの検討を始めてから実際に売却するまでの展開が、物語形式でまとめられています。アドバイザーや買い手企業等、関係者とのやり取りがリアルで、実際の流れをイメージしやすい内容。M&Aの解説書の中には、アドバイザーや金融機関向けに、法律的な手続きや税率などにフォーカスされているものも多く、経営者視点で全体像を把握できる本書は貴重な一冊です。なお、第四部には企業価値算定の計算式等も出てきますが、経営者の方はこのあたりは飛ばし読みでもよいと思います。

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執行役員 コーポレート本部長 齋藤 俊
慶應義塾大学商学部卒業。新卒で有限責任監査法人トーマツに入所。地方銀行から都市銀行まで様々な規模の監査業務、財務DDや内部統制構築支援に従事したのち、官民ファンドにてVC投資(ヘルスケア、バイオ、物流、小売、輸出商社、養殖etc)やJV投資(飲食店、観光業、食品加工、輸出業等様々な業種の投資)やハンズオンによる経理体制の構築、会社設立支援(各種規定の作成)を実施。
2019年5月にM&Aクラウドに参画し、アドバイザリー業務やコーポレート業務全般を担当。

③弁護士 砂田のおすすめ
「日本のエクイティ・ファイナンス」

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エクイティファイナンスのことなら何でも載っているといっても過言ではない、百科事典のような一冊。歴史的経緯から費用、スケジュールの話まで、ネットにもあまり落ちていないような情報が得られ、「なぜこういう仕組み、慣習になっているんだろう?」といった素朴な疑問にもれなく答えてくれます。

エクイティファイナンスに関して、法律面や税務面に関して書かれた本はそこそこありますし、法律や税務を学ぶことで、ストラクチャーについての理解を深めることはできます。しかし、本書の場合は、より根源的な「なぜエクイティファイナンスを行うのか?」「このタイミングで、どうして他の手法ではなく、エクイティファイナンスをするべきなのか?」という部分にまで踏み込んで書かれている点が大きな特長。他の解説書を読んでモヤモヤしている人にもおすすめです。

起業家の中には、将来のIPOを目標にしている人も多いでしょう。では、なぜIPOを目指すのか――「エクイティファイナンスによって、広く大衆から資金を調達する市場にアクセスするため」というのが本来の理由だとすると、「そもそもエクイティファイナンスってなんだっけ?」という点を理解しないと、IPOの意義もまた理解できないと思います。その意味で、本書は今後、起業やCFOを目指す方にとって、目を通しておいて損はない一冊です。

500ページ近い大作だけに、価格はちょっと高めです。また、2017年発行なので、実務面で一部最新ではない情報も含まれている点はご留意ください。

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執行役員 法務コンプライアンス室長 砂田 有史
早稲田大学法学部卒業、University of Southern California Gould School of Law LLM卒業。
国内企業法務事務所にて各種M&A手法に関するアドバイス、ストラクチャリング、デューデリジェンス、契約書類の作成及び交渉等を取り扱ったのち、グリー株式会社にてM&A、スタートアップ投資、VC投資等のコーポレート・アクション及びガバナンス体制の整備等に従事。その後、REVICパートナーズ株式会社のシニア・ディレクターとしてコーポレート・メザニン・ファンドの運用に従事。株式会社メイコー、株式会社I-ne、東洋刃物株式会社、株式会社ブイキューブ及びクロノス株式会社の監査役及び監査等委員たる取締役を歴任。2021年1月にM&Aクラウドに参画。

④CEO 及川のおすすめ
「顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説」

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ザッポスの創業者トニー・シェイは、世界を代表するシリアルアントレプレナー。Amazonへの売却も含めて2度の売却を経験しています。本書では、その創業から売却までがリアリティを持って書かれており、読者は著者のキャリアを追体験しているような感覚を味わえる点が魅力。特にザッポス売却時のエピソードは感動的で、起業家の選択として「売却もありだな」と思わせてくれます。

また、1社目のオンライン広告会社をマイクロソフトに売った後、著者は1年間のロックアップを提示されていたにも関わらず、「Vest in Peace(会社売却後、何らかの権利が行使できる状態になるまで静かに待つこと)」の虚しさに耐えられず、約800万ドルを放棄して自由を選択します。このあたりの心理描写の生々しさも印象的。売った後のことが書かれている本はなかなかないので、面白いです。

会社売却に関しては、実はM&Aクラウドも、数十億円でオファーをもらったことがあります。おかげで「既存プレイヤーに対してイノベーションのジレンマ』を仕掛けることができたスタートアップは、高い評価を獲得できる」と実感でき、自信になりました。M&A市場の伸びや自分自身のフィットからも、僕はこの領域に人生を賭けたいと思っているので、売却には至りませんでしたが、今後も、①イノベーティブな手法で勝負する、②既存プレイヤーも含め、他社が追随できないレベルのトラクションを作る、の2点を追求し、時価総額10兆円を目指して企業価値を高めていくつもりです。

ファイナンスの勉強は、独学でもできます。僕自身の方法を少しご紹介すると、まず、Yahoo!ファイナンスで、時価総額や営業利益のランキングなどを片っ端から見て相場観を養いました。上場各社の「成長可能性に関する資料」を見るのも、「上場時にはこういう状態を作らないといけない」というイメージができ、参考になります。また、「新規上場申請のための有価証券報告書」を読むと、①上場時の持ち株比率、②ストックオプションを誰にいつどのくらい出しているのか、③いつどれくらい調達していて、その時の業績はどれくらいなのか、などがつかめるので、こちらもおすすめです。

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代表取締役CEO 及川 厚博
2011年大学在学中にマクロパス株式会社を創業。東南アジアの開発拠点を中心としたオフショアでのアプリ開発事業を展開し、4年で年商数億円規模まで成長。別の事業に集中するため、2015年に同事業を数億円で事業譲渡。その際に、売却価格の算定と買い手探しのアナログな点に非常に苦労した。また、自分自身が事業承継問題の当事者であり、中小ベンチャーのM&Aに興味を持った。これらの課題をテクノロジーの力で解決したいという思いから、株式会社M&Aクラウドを設立。Forbes NEXT UNDER 30選出。

⑤COO 前川のおすすめ「マネーの拳」

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ファイナンスの話はテクニカルな部分も多いため、「分厚い本では、なかなか頭に入ってこない……」という人も多いのではないでしょうか。そんな人のために、私からは、ストーリーを楽しみながらファイナンスも学べてしまう、優れものの漫画を推薦します。

全12巻からなる「マネーの拳(けん)」は、元ボクサーが第二のチャレンジとして、最初は居酒屋、後にはアパレルの経営に挑戦する物語。経営のことをよく知らない元ボクサーの話なので、一般的なファイナンスの失敗談があれこれ含まれており、読みごたえは十分です。ファイナンスだけでなく、広く経営全般を学べる作品です。

ファイナンスは、会社のミッションやビジョンを達成するための一つのツールでしかありません。昨今では大型ファイナンスをすることで、経営がおかしくなる会社も多数存在していると感じています。お金があるからこそ、めちゃめちゃ家賃が高いオフィスに移転したり、お金があるからこそ、ペルソナ以外の採用を乱発してしまったり。よくあるスタートアップの落とし穴です。

本書の主人公、花岡とともに波乱万丈の経営者人生を満喫しながら、なぜファイナンスが必要なのか、改めて考えてみませんか? 私にとっても、経営者としての原点に立ち返らせてくれる座右の書です。

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代表取締役COO 前川 拓也
新卒でホクレン農業協同組合連合会に所属し、てん菜事業に関する100億円規模の収支計画を組む業務を行う。農業団体にいた経験により、退会後は生産調整されている農畜海産物を直接飲食店に届けるeコマース事業moremoreを2014年に立ち上げる。2年後に事業を売却。事業売却時に感じた不快感と父の会社を継がずに廃業させてしまった後悔の念から、M&Aクラウドを立ち上げる。

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