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MACAPが読み解く2021年12月IPO企業解説「ネットプロテクションズホールディングス」

UPDATE M&Aクラウド

投資銀行や総合商社、FASなどでM&Aの現場を経験してきたメンバーが集まる、M&Aクラウドのプロフェッショナル部隊、M&A Cloud Advisory Partners(MACAP)。企業の成長手段としてのM&Aや資金調達をサポートしており、特にIT企業の支援において豊富な知見を有しています。

そんなMACAPのメンバーが日々ウォッチしている成長企業の中から、今回は2021年12月にIPOを果たした株式会社ネットプロテクションズホールディングスに注目。業況や周辺環境、IPOの概要、IPOに至る資本政策の流れなどを分析しました。投資家の皆さんやM&A業界で活躍中の皆さんのご参考になれば幸いです。

企業分析

事業内容:国内BNPL大手、BtoC向けシェアは40%超

ネットプロテクションズホールディングスは、現在話題となっているBNPL(Buy Now Pay Later)事業を展開しています。

BNPLとは?
クレジットカードと同じく後払いの決済方法ですが、与信審査が早く簡易で、クレジットカードのようにカードを持つ必要がないことが特徴となっています。クレジットカードは与信審査が必要となり発行に時間がかかり、発行できない場合もありますが、BNPLは審査も簡便ですぐに使えるという利便性に加え、与信枠はBNPLの利用とその後の返済に応じて増加していくという違いがあります。
また、国内の場合には、手数料を消費者が負担する場合もあり、支払回数は一括であることが多い一方、海外の場合には、手数料は加盟店側だけが負担し、また支払回数が分割となることが多いという特徴があります。

国内BtoC向けでは、「NP後払い」「atone」、海外BtoCでは「AFTEE」、国内BtoB向けには「NP掛け払い」というサービスを提供しています。特に、BtoC 取引向け国内 BNPL 決済サービス市場において 40% 以上※のシェアを誇っています。

※矢野経済研究所「2021 年版 オンライン決済サービスプロバイダーの現状と将来予測」より、後払いサービス市場の 2020 年度見込金額(8,820 億円)と「NP 後払い」、「atone」の 2020 年度取扱高合計金額(約 3,600 億円)をもとに算出

出所:ネットプロテクションズホールディングス コーポレートサイト

経営陣の顔ぶれと経歴

株式会社ネットプロテクションズは2000年1月に創業し、2001年にITX株式会社により買収。ITXより出向した柴田 伸氏が2004年から代表取締役を務めています。

柴田氏は一橋大学卒業後、日商岩井株式会社(現・双日株式会社)に入社し、たばこ関連事業に取り組みました。2001年にITXに転職後、ネットプロテクションズの買収に従事し、すぐに出向、その後「NP後払い」を2002年にリリースしています。創業者ではないものの、現在の本業を創り上げています。

CTOの鈴木 史郎氏は、東京工業大学大学院卒業後、株式会社構造計画研究所に入社し、コンピュータ・シミュレーションや金融計算など、数理技術を活用した研究開発に従事しました。その後2002年にネットプロテクションズに入社しており、柴田氏同様約20年にわたり後払いビジネスに従事しています。

また、CFOの渡邊 一治氏は公認会計士で、朝日監査法人(現有限責任あずさ監査法人)に入社後、上場会社の監査やIPO支援に従事しています。アーサーアンダーセン・ニューヨーク事務所コンサルティング部門、半導体製造装置メーカーの株式会社ディスコ、株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスのCFOを歴任後、2020年7月にネットプロテクションズに入社しCFOに就任しています。

現在、ネットプロテクションズホールディングスの経営陣は社内取締役4名、社外取締役2名、社外監査役3名で構成されています。以上9名のうち、女性は2名(22%)です。

PL:21年3月期の収益は前期比18.1%増と好調

連結損益計算書における売上収益は2020年3月期に148.8億円、2021年3月期に175.8億円とYoYで18.1%増となっています。年間取扱高も増えており、2021年3月期には、BtoCサービスは前年同期比で19.7%増で3628.71億円、BtoBサービスは前年同期比で27.1%増となり752.81億円と成長しています。

また、営業費用には、回収手数料、請求書発行手数料、貸倒損失等が含まれており、後払い決済ならではの収益構造となっています。

BS:BNPL特有の未収入金、未払金の多い構造

ネットプロテクションズホールディングスは固定資産を多く持つ必要のないIT企業であること、また決済事業であることから、資産の部においては、営業債権及びその他の債権のうち、未収入金が多く、また営業債務及びその他の債務においては、未払金が多くなっています。

2021年3月期の連結財政状態計算書における総資産は449.2億円ですが、未収入金(ユーザーからまだ支払われていない金額)は238.9億円、未払金(加盟店に対してまだ支払っていない金額)は233.2億円と後払い決済特有のBSとなっています。(他のBS上の項目については、資産の部ののれんや負債の部の有利子負債が主なものとなるため、割愛します)

また2021年3月期の連結損益計算書における売上収益は175.7億円、取扱高は3628.7億円となることから、取扱高に対する未収入金回転日数は24.0日、取扱高に対する未払金回転日数は23.5日と後払い決済の回収スピードを確認することもできます。

業界分析

いまホットなBNPL業界

2021年9月に米国の決済大手PayPalによる日本のBNPLサービス提供企業Paidy買収のニュースがM&A業界を駆け巡りました。3,000億円という買収金額もエポックメーキングともいえるインパクトがあり、M&A市場で大きな注目を集めました。

BNPLは海外で特に成長しており、スウェーデンのKlarna、アメリカのAffirmやオーストラリアのAfterpay等急成長中の企業が存在しています。

BNPLを利用すると購入者は商品受け取り後に支払いを行うため、詐欺等の商品トラブルを避けることが可能となります。一方で、商品販売業者やサービス提供業者は、間に入るBNPLサービスの提供業者の手数料を差し引いた金額をすぐに受け取れるため、代金未回収リスクを最小限に抑えられ、非常にありがたいサービスとなっています。

近年、この後払い決済は、国内でも若者などを中心にニーズが増えてきており、昨今、アマゾンをはじめとして、多くのECサイトでも、このBNPL決済を選択できるようになっています。

出所:ネットプロテクションズ「新規上場申請のための有価証券報告書」

拡大期待高まる市場。一方で知名度はまだまだ

日本市場では、今回取り上げるネットプロテクションズや上述したPaidyなどの企業がBNPLサービスを提供しており、クレジットカードの不正利用等に対して不信感を持つ若者や、都度払いによる使いすぎを防ぎたいと考える主婦層、クレジットカードを使用しないシニア層などに多く使われています。

海外と日本のBNPLの違い
海外のBNPLプレーヤーはクレジットカードが発行できない層が主な顧客対象となっており、ショッピング後に毎月定額を支払う日本のクレジットカードの分割払いに近いサービス設計になっています。一方、日本国内においては、クレジットカードは利用額がわからない、分割払いによる金利に対する不安などから、後払いは翌月一括払いが主流となっています。

矢野経済研究所によると、後払い決済の国内市場は2020年度には8,800億円あり、2024年度には倍以上の1兆8,800億円まで拡大すると予測されています。

背景には、EC消費そのものの拡大はもちろんのこと、消費者によるBNPLニーズの増加、後払い決済サービスによる送客増加を期待するEC事業者のBNPL決済の導入拡大などがあるようです。

クレジットカードの市場規模と比較すると、まだまだ小さいものの、成長余地は十分あるといえます。

出所:矢野経済研究所「EC決済サービス市場に関する調査を実施(2021年)

しかし、日本国内ではまだまだ新しいこのBNPL決済は、今後、使いすぎによって、利用者が過大な債務を負うような事例が増えてきた場合、何らかの規制強化がなされる可能性も否定できません。そうなった場合は、必ずしも下記予測のようなバラ色の市場成長を実現できない可能性があることには留意する必要があります。

また、市場成長を実現するためには、「BNPLの認知度の低さ」へも各社対策が必要といえます。日本トレンドリサーチの調査ではBNPLを知らない人が70%を超えていますし、知っている人の中でも46%と半数以下しか使ったことがないとのアンケート結果が出ています。

出所:「日本トレンドリサーチ・ネット通販に関する調査

クレジットカードが広く浸透している日本においては、ECサイトでの購入時には多くの人がクレジットカードを利用していることもあり、BNPLの優位性を訴求するためには、キャンペーン等で一度使ってもらうなどして、メリットなどを体感してもらう必要がありそうです。大きく広がるには、まだまだ時間がかかるかもしれません。

群雄割拠。抜きん出るネットプロテクションズ

今回取り上げるネットプロテクションズは日本国内ではBNPLサービスの草分け的存在であり、同社によるとBtoC向けサービスでは取扱高でシェア40%超と圧倒的No.1になっています。

しかし、国内のBNPL市場では、数多くの企業がサービス提供しており、上述したPaidyだけでなく、運送会社のヤマト運輸や佐川急便、EC事業者のメルカリ子会社のメルペイなどが続々と参入してきており、群雄割拠の様相を呈しています。こうした中、ネットプロテクションズは特定の事業、特定の決済システムに基づかないことが強みとなっており、今後の戦略としては、リテールのハウスアプリにホワイトラベルのような形で後払いサービスを展開していくことも検討しています。

ただ、従来のクレジットカード決済やQRコード決済など、消費者が支払いを先延ばしできる方法が存在しているため、BNPLサービス提供企業以外とも戦う必要があり、決して油断できる状態ではないといえます。

出所:ネットプロテクションズ「BNPLカオスマップ

IPOの概要

ネットプロテクションズホールディングスは、2021年12月15日に東京証券取引所1部にIPOしました。IPO関連のデータは以下を参照することとします。

公開価格PERは前期基準199.72倍ですが、同業のGMOペイメントゲートウェイ(3769)(前期基準PER121倍)とPERを比較すると割高に感じられます。ただ当社が出している調整後EBITDA27億7,000万円を元にEV/EBITDA倍率で見ると前期基準50倍となり同業とほぼ同水準となります。

利益水準については今後の成長期待を多分に含んでおり、足許のマルチプル評価で見てしまうと少々振り切れた倍率になってしまっていますが、今期見込み(FY1)だけでなく、来期見込み(FY2)を見込んだうえでの価値評価になっているのではないかと考えられます。

公開価格1,450円(時価総額1,398億4,800万円)に対して初値は 1,378円(同1,329億300万円)で、初値騰落率は-4.96%となりました。

本件のようなPEファンド関連のIPOについては、株式市場から売却価格の最大化を図るために高値をつけているのではないかと懸念されることが多くあり、ファンドIPOというだけで初値が公開価格を下回ることがあります。今回その懸念を最小限にするため、株主であるアドバンテッジパートナーズは一定程度の株式保有を継続しています。これは、本IPO時の供給過多になり、値崩れを抑えるという点に加え、まだ成長可能性を含んでおり、株価としては値上がりするという一つのシグナリングにもなります。

※現在の株価は1,399円(1月26日終値)。地合いの悪さもあり、公開価格を取り戻すには至っていません。

資本政策

PEファンドのIPOならではの複雑な組織変遷

ネットプロテクションズは創業は2000年1月28日ですが、その後2016年に株式会社アドバンテッジパートナーズより出資を受けた経緯があります。

PEファンドが買収した企業は、一般的にはLBOローンによる調達で投資を実行するにあたり、特別目的会社(SPC)が設立され、そこが投資主体となって買収が実行されることがほとんどです。その後、吸収合併をして一つの企業として運営していく形や合併せずに持ち株会社と連結子会社の事業会社という形で運営していくことが多いです。

ネットプロテクションズに関しても、アドバンテッジパートナーズにより2015年11月30日に設立されたSPCである株式会社AP53により、2016年7月21日投資実行・合併されました。さらにその後2018年7月2日に設立された株式会社NPホールディングスに株式移転をする形で現法人である株式会社ネットプロテクションズホールディングスに至ります。

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」

本件に関しては、買収するために設立したSPCを吸収合併させて、再度持ち株会社を作る形で株式の移転を行っています。この理由として想定されるのは、投資実行約2年で状況に変化が生じ、何らかの理由によりリファイナンスを行ったことが考えられます。または、メザニンの償還をするためのものであったのではないかと考えられます。

タームローンの返済期限が2026年9月30日になっているところからもその可能性がうかがえます。タームローンの借入期間は一般的には5~7年といったところであり、逆算すると、ローン実行のタイミングは2016年の投資実行時ではなく、2018年のNPホールディングス設立時だったのではないかと推測されます。

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」

その後、事業会社や長期保有を期待するヘッジファンドに対する資本異動と第三者割当増資による資本政策を実施し、最終的に上場しました。

現在は、株式会社ネットプロテクションズホールディングスを持ち株会社として、その連結子会社に事業運営を行う株式会社ネットプロテクションズと恩沛科技股份有限公司(NP Taiwan, Inc.)を有しています。

上場を見据えた戦略的な資本政策を実行

ネットプロテクションズホールディングスのこれまでの資本政策をたどると、上場を見据えた戦略的な資本政策を実行している典型的なパターンとして参考になる点が多くあります。

まず、2016年7月21日のアドバンテッジパートナーズによる投資実行時点から見ていきます。この時点での株主に関しては開示情報がないため詳細は把握できませんが、投資ビークルは複数あれど、買収主体のPEファンドであるアドバンテッジパートナーズが100%もしくはそれに近い株式数を保有していたと考えられます。

2018年7月2日のNPホールディングス設立時からは、都度詳細が開示されていますので、グラフにまとめました。なお、株式比率に関しては潜在株考慮していないベースでの計算となっておりますのでご了承ください。

一部、優先株式の発行など、資金調達を目的とした資本政策はある一方、事業シナジーを見込んだ提携による資本提携や上場後の株価の安定化を図るために長期保有を期待し、ヘッジファンドに対して株式を割り当てています。

上場前資本政策を一定比率行うことにより、アドバンテッジパートナーズの上場時の売出比率を44%程度に抑え、売出株数が多いことによる株価への影響を一定程度抑制することに寄与しているものと考えられます。そのうえで、上場後については23%程度の株式保有にすることで、一定のオーバーハング懸念が生じますが、長めのロックアップとともに、その影響を最小限にとどめることに寄与していると考えられます。

ここからは上のグラフの各タイミングについて、資本政策の意図を推測してみます。

<2018年7月2日 会社設立時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」を基に弊社作成

投資ビークルはいくつかに分かれているものの、99%程度をPEファンドであるアドバンテッジパートナーズが保有しています。一部1%弱を株式会社三井住友銀行が保有しているのですが、リファイナンスを実行した際に出資した形になるのではないかと想像されます。

<2019年6月20日時点 リコーリース株式会社資本参加時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」を基に弊社作成

リコーリース株式会社が投資ビークルから資本異動を受け、資本参加しています。

リコーリースは、事業のひとつとしてサービス事業(集金代行サービス・医療/介護ファクタリング)を行っており、事業シナジー的にも関係性が強いことから資本参加したと想定されます。

<2019年7月19日時点 株式会社博報堂DYホールディングス資本参加時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」を基に弊社作成

株式会社博報堂DYホールディングスが投資ビークルから資本異動により、資本参加しています。

<2020年8月24日時点 A種優先株式発行時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」を基に弊社作成

A種優先株式を発行し、株式会社AP66(アドバンテッジパートナーズ)とリコーリースに割り当てています。目的としては資金調達のためと想定されます。

<2020年10月9日時点 減資時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」を基に弊社作成

資本金を1億円まで減資する調整を行っており、目的としては税務上の中小企業としてのメリットを受けるためと想定されます。資本金の額が1億円以下の会社は「中小企業」と位置づけられるので、税務上多くの優遇措置が設けられています。

<2021年2月26日時点 株式会社ジェーシービー資本参加、A種優先株式(株式会社AP66)を自己株式として取得・消却時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」を基に弊社作成

AP66の保有するA種優先株式を自己株式として取得しており、その後自己株式消却しています。優先株式は上場前にはなくす必要があるため、資金が回るようになったタイミングで償還を進める必要があります。

また、株式会社ジェーシービーに対して、投資ビークルから資本異動と第三者割当増資を行っています。

上記プレスリリース内では、資本提携の目的として、JCBの豊富な加盟店ネットワーク及び多様な決済ソリューションとそれを支える高度なサービス運営オペレーションと連携することによるサービス拡大と品質向上の実現が挙げられています。

<2021年3月24日時点 株式会社インフキュリオン資本参加時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」を基に弊社作成

株式会社インフキュリオンに対して、第三者割当増資を行っており、資本参加しています。

インフキュリオンは、社会のDXを担う企業として「BaaS(Banking as a Service)プラットフォーム事業」「コンサルティング事業」「加盟店向けソリューション事業」を展開している企業で事業シナジーが想定されます。

<2021年3月26日時点 減資時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」を基に弊社作成

<2020年10月9日時点 減資時>と同様で、資本金を1億円になるように減資しています。

<2021年6月11日時点 Tsunagu Investments Pte. Ltd.資本参加時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」を基に弊社作成

Tsunagu Investments Pte. Ltd.に対して、投資ビークルから資本異動と第三者割当増資を行っています。

Tsunagu Investmentsはシンガポールに拠点を持つヘッジファンドであるPavilion Capitalを親会社としているヘッジファンドで、IPOを見据えた安定株主として入れたものと考えられます。

<2021年8月2日時点 A種優先株式(リコーリース株式会社)を自己株式として取得・消却時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」を基に弊社作成

こちらはAP66と同様に、自己株式として取得しており、すぐに消却されています。

<2021年9月30日時点 1:1000の株式分割実施時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」を基に弊社作成

IPOを見据えた株式分割と考えられます。分割を行い、1株当たりの株価を抑えることで、日本証券取引所が推奨している1単元100株、かつ望ましい投資単位として5 万円以上50 万円未満という水準に適応させています。

<2021年10月1日時点 York Asian Opportunities Investments Master Fund, L.P. / York Japan Focused Master Fund, L.P.資本参加時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」を基に弊社作成

York Asian Opportunities Investments Master Fund, L.P. / York Japan Focused Master Fund, L.P.に対して、投資ビークルからの資本異動及び第三者割当増資を行っています。

York Asian Opportunities Investments Master Fund / York Japan Focused Master Fundの親会社であるYork Capital Management Global Advisors LLCはニューヨーク市に本社を置き、ロンドンと香港に拠点を構えるヘッジファンドです。

こちらもTsunagu Investmentsと同様、IPOのための事前の資本政策であり、上場後の安定株主として期待して入れたものと考えられます。

<2021年10月25日時点 代表取締役社長 柴田紳氏と取締役CTO鈴木史朗氏のS.O.行使>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」を基に弊社作成

IPOに際して、第1回新株予約権を行使し、代表取締役社長である柴田 紳氏と取締役CTOの鈴木 史朗氏が普通株式を取得しています。

新株予約権については、第1回新株予約権は上記の通り行使されていますが、第2回~第5回まで発行されており、潜在株式として3,845,000株(3.99%)が存在します。

<2021年12月15日時点 新規株式公開時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」「訂正有価証券届出書」「英文仮目論見書」を基に弊社作成

新規株式公開時にはアドバンテッジパートナーズの投資ビークルに加えて、代表取締役社長である柴田 紳氏と取締役CTOの鈴木 史朗氏も売り出しています。ここでの売出株数は、国内8,541,800株、海外32,018,200株の合計40,560,000株です。(オーバーアロットメント分の2,131,000株を除く。)

また、公募株数は、国内1,000,000株、海外3,000,000株の合計4,000,000株となっています。

<2021年12月17日時点 O.A.返却時>

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」「訂正有価証券届出書」「英文仮目論見書」「大量保有報告書」「変更報告書」を基に弊社作成

上場後、アドバンテッジパートナーズの投資ビークルから大和証券にO.A.のためにしていた貸株が返却されています。

オファリングストラクチャー

新株発行による成長資金の調達。内外比率も海外を多めに

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」「訂正有価証券届出書」「英文仮目論見書」を基に弊社作成

BNPL(Buy Now Pay Later)銘柄であり、今後の成長について期待されることから、公募によって新株を発行して資金調達も行っています。

また、内外比率に関してはおおよそ2:8と比較的海外についても多めに割り当てており、現状展開している台湾だけにとどまらない海外でのビジネス展開についても期待されます。

Rule144Aに基づくグローバルオファリング形態で幅広い需要の取り込み

144Aによるオファリングを行っており、北米投資家も併せた全世界の投資家への投資勧誘が可能になっています。

公開価格ベースの想定時価総額が1,398億円であり、オファリング金額としては約670億円になるため、規模的にも144Aによるオファリングが最適かと思われます。

オーバーハング懸念を最小限にするためのロックアップ

なお、各株主におけるロックアップは以下の通りです。従来からの株主であるアドバンテッジパートナーズの投資ビークルと代表取締役社長の柴田 紳氏と取締役CTOの鈴木 史朗氏については360日と長めのロックアップがかかっており、その他の株主については180日となっています。

出所:ネットプロテクションズ「有価証券届出書」「訂正有価証券届出書」を基に弊社作成

グローバルオファリングに対応したチーム体制

本IPOの主幹事は大和証券株式会社、SMBC日興証券株式会社、クレディ・スイス証券株式会社、みずほ証券株式会社による共同主幹事を採用しています。また海外への売出・募集に関しては、大和証券、SMBC日興証券、クレディ・スイス証券のジョイント・グローバル・コーディネーターで実施しています。

投資家に対する需要状況等の把握及び配分に関しては、大和証券、SMBC日興証券、クレディ・スイス証券の3社で行っており、みずほ証券は上記に入っていないことから、幹事証券会社としての位置づけになるかと思われます。

144AによるグローバルオファリングのIPOを行う場合は、規模感が大きくなることから、海外と国内の投資家に対して幅広くリーチしなくてはならないことから、複数の証券会社を主幹事として行うことがほとんどです。

この場合も、海外への投資家リーチを増やすことを目的として、クレディ・スイス証券を起用し、大和証券及びSMBC日興証券に対しては、上場のための審査回りなどの必要作業を含め、オファリングについては国内はもちろん、海外における主要な投資家に対してのリーチを期待している起用だと考えられます。

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