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2回のEXITを経験したからこそ見つけたキャリア。EC運営の変革に挑む「3社目の経営」で目指す未来

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就活支援とアパレルECという大きく異なる領域で、スタートアップの共同創業者/取締役を務めた樋口 幸太郎氏。1社目は就活支援業界で広く知られるネオキャリア、2社目は東証プライム上場のアダストリアグループへのM&Aを実現し、今年3社目を始動。ECコンサルティング事業を手がけ、EC経営管理において培ってきた独自の知見を展開しています。

今回は、樋口氏のこれまでの軌跡と今後のビジョン、後輩起業家へのアドバイスなどを聞いたロングインタビューの後編です。IPO準備も進めていた2社目のM&Aに踏み切った経緯、そして2社のM&Aを経験した今、感じる「起業家にとってM&Aの持つ意味」とは――?

※前編はこちらからご覧ください!

M&A先選択の決め手は、事業経験の豊富さ。入社直後だった社員の反応は?

――M&A先については、どんな希望をお持ちでしたか?

創業から5年間やってきて、アパレルの難しさはよく分かっていた分、安定的に事業を継続・成長させてくれそうな会社というのが第一条件でした。と言うと、きれいごとに聞こえるかもしれませんが、自分たちのもとでオープンアンドナチュラルを伸ばせると判断してくれた会社、イコール高い評価を付けてくれる会社でもあると考えました。

もう一つ、代表も僕も、この事業からは離れる考えだったので、ロックアップ期間の短さも考慮に入れていました。

最終的には、やはり先方の事業経験の豊富さを考えて、アダストリアグループのBUZWITTさんに託すことを決めました。1年のロックアップ期間に関しては、もっと短い条件を提示してくださった会社もありましたが、残る社員のことを考えてアパレル事業を安定的に営んでいる大企業を選択させていただきました。

――社員の皆さんは残った方が多いのですか?

M&A公表後もほとんどのメンバーが残っています。給与水準も上げていきたいと言われており、アダストリアグループに加われたことで喜んでくれる人が多くて。M&A発表時に入社して2週間という人もいて、心配だったんですが、「実はアダストリアさん、就活で受けて落ちてしまったので、グループ会社になれて嬉しいです」と言われまして(笑)。ほっとしましたね。

これまで業績好調だったとはいえ、やはりスタートアップだけに、属人的な部分もかなりありました。そこの型化、組織化は、PMIである程度やってきましたので、会社・ブランドにとっても、長期的に見てよかったと思っています。

3社目はECコンサルで始動。事業多角化も視野に、ベストな組織体制を模索中

――樋口さんご自身の今後についても、伺いたいと思います。すでに新会社を設立されたそうですね。

オープンアンドナチュラルのロックアップが外れるのが1月末だったので、そのタイミングで保険や扶養を切り替えられるよう、12月中に会社設立して準備してきました。EC運営会社を対象にした経営コンサルの会社です。

――オープンアンドナチュラルでの経験が、次のキャリアのベースになっているのですね。

その通りです。佐藤君のように、クリエイター気質で経営管理は苦手なタイプって、EC会社のトップにはかなりいるだろうなと。そこに僕がオープンアンドナチュラルで培った機能を提供すれば、成長を加速させられるのでは、というのが今の仮説です。対象は、アパレルに限らず、ジュエリー、家具など、在庫管理が必要なECビジネス全般。すでにクライアントさんも何社かつき、今のところ順調に来ています。

――オープンアンドナチュラルを通じて、樋口さんの実力が証明されているのは強いですよね。2回のM&Aを経て、ECオペレーション管理の第一人者としての地位を確立されたわけですね。

自分の適性を生かす形で、キャリアチェンジしてこられたのは、本当によかったと思っています。ただ、今回の会社を先々どうしていくかは悩むところですね……。

――というと、ECコンサルだけでなく、その先の事業展開もすでに想定されている?

実はいろいろあって。まず、ECコンサルでケーススタディが溜まっていくと、在庫ビジネス におけるベストプラクティスや「こういった管理は共通化できる」という方程式のようなものが見えてくると思っています。それを突き詰めるとパッケージ化でき、さらに突き詰めるとシステム化も可能ではないかと思っています。そこから派生して、他にも思い描いているプランはいくつかあるので、それらを全部実現するには、どんな組織体制がいいのかなと。

会社を売却すると、自分自身の経験値は残りますが、それまで一緒に成長してきた人材も組織もなくなってしまう。その点では、次もゼロからのスタートになります。今回は祖業の発展形として、第二、第三の事業をつくっていきたいので、人や組織をうまく残せるよう、最適なハコとしての会社のあり方を模索しているところです。

僕自身、上場したい思いはそれほどないこともあり、DMM.comさんなどは参考になるなと思っています。もちろん、すごく強いコア事業があるからこそだと思いますが、アニメ制作をやったり、水族館をやったり、あの自由さはいいですよね。あまり大きいことは言いたくないですが、あんなふうにやれたらいいなと思って見てます。

M&Aはゴールではなく“手段”。理想のキャリア実現に向け、上手に活用を!

――2社のM&Aを経験された樋口さんから、後輩の起業家に向けてアドバイスを頂けますか?

先ほども触れたように、最初の起業以来、「とりあえず勝てそうなところ」でチャレンジしてきた僕が、自分の強みを認識し、「在庫ビジネスの経営管理」というテーマに出会うことができたのは、M&Aを活用してきたからこそだと思います。会社の成長や自分のモチベーションに限界を感じている人は、いったんM&Aで区切りをつけることで、心機一転、次のキャリアにチャレンジすることもできる。選択肢として、一度検討してみるとよいかと思います。

基本的にベストはM&Aせずに、自分が情熱を燃やし続けられる事業を続けることだと考えています。M&Aしたくない事業・組織を作るのが起業家にとっては一番幸せなことだと、2回M&Aをしたからこそ感じています。

そうはいっても、事業をしていると市場の限界値が見えたり、組織経営が辛くなったりといったことがあり、M&Aを考えたくなることがあると思います。そのときは、自分が人生をかけて取り組み続けたいテーマかどうか、築き上げてきた組織と一緒にやっていきたいのかを振り返って考えるとよいのではないでしょうか。その上で、M&Aで区切りをつけて新しい環境に身を置きたいと思えるのであれば、よい選択になるかと思います。

M&Aでキャッシュが入ってくることで、次のチャレンジは生活の不安がない状態でできることも大きいです。やっぱり精神衛生上、全然違いますよね。今もふと1社目の頃を思い出し、現状のありがたみを噛み締めることがあります。

ただ、M&Aが決まった時や進めるプロセスの中で、興奮や喜びがあるかというと、僕の場合はあんまりなくて淡々としていました。ビジネスをしているとアドレナリンが出るような瞬間があると思いますが、僕にとっては2回のM&Aともに粛々と進めるものでした。

僕自身が喜びや興奮を感じたのは、「Unistyle」で考えた企画やビジネスモデルが当たった時、オープンアンドナチュラルでは販売した商品が売れて数字として月商1億円、2億円、3億円と突破した時、ECコンサルで仮説通りに契約が取れた時などです。

結局、起業家にとって、M&AやIPOはゴールではなく、あくまで手段なのかなと思います。自分は人生で何を達成したいのか、何に喜びを感じるのか。その点を見失うことなく、M&AやIPOを上手に活用していっていただければいいんじゃないでしょうか。僕自身、偉そうなことを言える立場でもないですが、今までの経験から言えるのはその点です。

――ECビジネスを展開するスタートアップに向けたアドバイスもあれば、ぜひ。

ECの場合、通常のスタートアップとはちょっと考え方が違うと思っています。チャネルがインターネットであるというだけで、要は物販、小売り業ですから、黒字経営が基本です。日本政策金融公庫、きらぼし銀行の創業支援融資、信用保証協会付き融資など借入での資金調達手段が豊富なので、まずはそこから検討すべきで、エクイティで調達するのは結構リスクが高いと思っています。

オープンアンドナチュラルでは、初期の商品開発といった研究開発費はエクイティで調達してもいいけれど、日々の運転資金は営業キャッシュフローと借入で賄い、営業キャッシュフローの中からしっかり返済できる範囲を逸脱しないと決めていました。

財務キャッシュフローに頼りすぎず、営業キャッシュフローの中で運営することが、小売りビジネスを長期安定的に成功させる上では不可欠だと感じています。一方で営業キャッシュフローをどの期間で見るのか、システム的に特定期間の営業キャッシュフローを見ることが難しいといった大手企業の課題なども聞いているので、そこも含めた最適化といったテーマには、今後時間をかけて取り組んでいければと思っています。

樋口氏への相談受付中!

スタートアップのM&AやEC運営などに関して、樋口 幸太郎氏に直接相談されたい方は、以下のいずれかにご連絡ください。

会社Webサイト:https://bizgem.jp/
会社メール:higuchi@bizgem.jp
個人Twitter:https://twitter.com/happytarou0228
個人Facebook:https://www.facebook.com/kotaro.higuchi.73

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