【事業会社からの資金調達事例集②】事業成長を加速するスタートアップ出資の可能性
「資金調達クラウド」のローンチを記念し、当社サービスにて出資実績をお持ちの皆さんに、スタートアップへの期待、交渉中の評価ポイント、出資後のサポート内容などをインタビューし、「事業会社からの出資」のリアルを紹介する本シリーズ。今回は、ファブリカコミュニケーションズ、シーラテクノロジーズ、ケネディクスの3社に、決断の舞台裏を聞きました。VCとはやや異なる事業会社攻略法を研究する一助になれば幸いです!
ファブリカコミュニケーションズ「財務諸表に表れる経営陣の考え方を見極めます」
Q1 スタートアップへの出資目的は?
2021年の上場をきっかけに、新しい成長の柱となる新事業の確立にチャレンジしており、その一環で出資やM&Aも積極的に検討しています。出資の目的は「時間を買う」手段であると考えており、対象先はスタートアップに限定しているわけではありません。
事業領域も当初は幅広く探していましたが、実際に多くの企業から話を伺い、当社グループとのシナジーを検討しているうちにターゲットが絞られ、現在はBtoBのSaaSビジネスにフォーカスしています。
Q2 交渉プロセスでの評価ポイントは?
出資後も先方の経営陣と長く良好な関係を築いていきたいので、カルチャーフィットは大切にしています。当社は創業から30年と業歴が長く、主にBtoBの領域にて堅実に歩んできた会社ですので、成長戦略についての考え方が合致するかを重要視しています。そのあたりが分かりやすく表れるのがお金の使い方ですね。財務諸表から経営陣の考え方が見えてくる点もあります。
あとはやはり、事業にかける熱量ややり切る姿勢ですね。仲間として、共にチャレンジしていきたい相手かどうか。中には、早期のExitをゴールに据えている起業家もいると思いますが、その場合は当社の対象にはなりにくいと思います。
Q3 iimonさんとのディールでは1回のラウンドで4億円の出資という決断をされました。
不動産領域にも進出したいと思っていた中で、プロダクトもマネジメントチームも素晴らしい会社に出会えたので、できるだけ強固な関係を築きたいと考えました。不動産DXの新サービス開発に向け、協業を進めています。
iimonさんはIPOを目指しているので、その点でも当社の経験を活かしたサポートをしていきます。ガバナンス体制の整備など、なかなか手が回らない部分もあると思いますので、必要に応じてハンズオンでフォローしていきたいですね。
■株式会社ファブリカコミュニケーションズの成約インタビュー
■株式会社ファブリカコミュニケーションズの募集ページ
シーラテクノロジーズ「一見、不動産とは関係のない技術でも検討対象になり得ます」
Q1 スタートアップへの出資目的は?
当社の不動産ビジネスとのシナジーが見込めるテクノロジーを開発中の会社と組み、双方の事業成長につなげていくことを狙っています。有望なテクノロジーを持っていても、事業化に向けたハードルに直面しているスタートアップは多数あります。そうしたスタートアップに当社のアセットやリソースを活用してもらうことで、ブレイクスルーを生み出してきました。
候補先は不動産テックが中心になりますが、それ以外の領域でも、当社ビジネスとのコラボレーションの可能性がありそうだと思えば、幅広くお話を伺っています。実際に一見、不動産とは関係のない企業から、具体的な協業の提案を頂き、出資検討を進めたケースもあります。
Q2 交渉プロセスでの評価ポイントは?
技術面、事業面のシナジー創出の可能性に加えて、経営者のお人柄が重要と考えています。だいたい2回、3回目面談を重ねる中で、その方の事業に向き合う熱量や人とのコミュニケーションの取り方などが見えてきます。今後のことを考えると、やはり互いに信頼して、気持ちよくやり取りできる方と組みたいですね。
Q3 出資先へのサポート内容は?
例えば、プラットフォーム運営の会社には当社の管理物件を提供、VRサービスを展開する会社とは当社の不動産ブランドでサービス活用することで、導入実績づくりにも貢献しています。
そのほか、追加出資のニーズがあれば対応するケースもありますし、経営面でも特に指導料などを頂くわけではありませんが、コンサルティングのような形でサポートすることもあります。これまで10社以上に出資してきた経験から、次、必要になるサポートが想定できる部分もあり、パートナーシップの深化に役立っていると感じています。
■株式会社シーラテクノロジーズの成約インタビュー
■株式会社シーラテクノロジーズの募集ページ
ケネディクス「社内のチームと協業しているイメージが湧けば、あとはリスクをつぶすのみです」
Q1 スタートアップへの出資目的は?
当社がオーガニックでは難しい、飛躍的なレベルの事業成長を目指すにあたり、有望なビジネスモデルやテクノロジーをお持ちの会社と協業関係を築くことです。社内では育成が困難、もしくは非常に時間のかかる事業の立ち上げフェーズをスキップすることで、スピーディーに結果につなげたいと考えています。
スタートアップとの連携に本格的に取り組み始めたのは、昨年です。当社は創業30年を迎える2025年までに、受託資産残高(AUM)4兆円(2020年12月期の約1.6倍)の達成を目指す長期ビジョンを掲げています。一方、不動産投資ファンドをめぐる競争環境は厳しくなっており、目標達成のためには、何かこれまでになかったピースを組みこんでいくことが必要です。
昨年、非上場化したのも、将来の有望事業の育成に向け、思い切った挑戦がしやすい環境をつくることが主な目的でした。同じタイミングで、社内に「新規事業室」を立ち上げ、パートナー探索をスタートさせています。
Q2 出資先を探す際の条件は?
やはり、当社事業とのシナジーが期待できることが最重要。加えて、初の出資決定となったecboさんのケースでは、以降の案件募集に弾みをつける狙いもありました。実際、IVSでの優勝経験もあり、知名度の高いecboさんに出資したことで、「ケネディクスはスタートアップ出資に積極的」というイメージが広まり、よいご縁をいただける機会が格段に増えました。
ecbo 工藤代表の人脈の力も大きく、続いて出資が決まったミラーフィットさん、コシックさんともに、工藤さんからご紹介いただいた会社です。起業家同士のネットワークにつながることができ、スタートアップ界の最新情報が入ってきやすくなりました。
新規事業室の立ち上げ当初は、主にピッチイベントなどで候補先を探していましたが、ピッチの上手さと協業相手としての相性のよさはあまり比例しないと感じていて……。半年ほどはマッチングの段階での苦戦が続きました。スタートアップへの出資を始めたばかりの会社の中には、同じ悩みを抱える会社もあるのではないでしょうか。調達希望の会社から見れば、特に門戸が広く、アプローチしやすいタイミングかもしれませんね。
Q3 交渉プロセスでの評価ポイントは?
「社内のあのチームとこんな協業が進められそう」と具体的なイメージが湧けば、あとは考えられるリスクをつぶしていくのみ。逆に言うと、事業そのものの伸びしろに魅力があっても、社内のメンバーとの協業プロセスに課題がありそうだと感じたときは、慎重にならざるを得ません。たとえば、メールの返信が遅い、資料の提出期限を守らないといったことがあると、やはり不安になります。
Q4 出資先へのサポート内容は?
当社でつながりのある会社で、先方の事業成長のプラスになりそうな先があれば積極的に紹介していますし、営業に同行することもあります。その他、ご相談があれば、幅広く対応します。
たとえば、ミラーフィットさんとは、同社のミラー型デバイス(フィットネスプログラムが楽しめ、スマートデバイスとしても使える全身鏡)の認知拡大のため、当社が展開する賃貸タイプの戸建てブランドへの導入を始めました。ミラーフィットさんにとって、今はプロダクトの導入実績を積み上げていくことが大事な時期なので、そこに貢献したいですね。当社にとっても、「戸建て賃貸」という希少性の高い領域で新たな訴求ポイントを獲得でき、Win-Winの関係を築くことができました。
■ケネディクス株式会社の成約インタビュー
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