
元ウェルスナビCMOが見据える「M&Aのマッチング」の仕組みづくり。プラットフォームのグロースに向けて
昨年の資金調達の発表を起点に、人材採用のブーストを目的とした「調達ブースト広報」を展開したM&Aクラウド。それから1年近く経ち、社員数1.5倍増、CxO経験者2名採用という成果につながったことは、先日の記事でご紹介した通りです。
今回は、採用ブーストでジョインしたCxO経験者の一人、三井のインタビューをお送りします。前職のウェルスナビで執行役員CMO(Chief Marketing Officer)を務め、同社の上場を支えた三井。マーケティングに関する豊富な知見とマネジメント力を併せ持つ彼が、これまでマーケティング経験者不在だったM&Aクラウドをどのように変えていくのか――プラットフォーム運営全般を統括する立場で描くビジョンと、そこにかける想いを聞きました。
三井 真輔(みつい しんすけ)■富山県出身。デザイン会社の営業を経てグリー株式会社のシニアマネージャー、株式会社Wondershakeのマーケティング部長、ウェルスナビ株式会社の執行役員CMOを経験。2022年4月よりM&Aクラウドに入社。プラットフォーム部長として、「M&Aクラウド」や今冬ローンチ予定の資金調達プラットフォームのマーケティング設計から運営までをリード。好きなものはマンガ、仮説と検証。
M&Aによるスタートアップ支援は、日本の課題の「本丸」。日本経済を取り巻く淀みからの脱却を
――M&Aクラウドへのジョインを決めた経緯からお話しください。
前職のウェルスナビでは、日本ではまだあまり一般化していない投資という切り口から、お客様の財産を増やすお手伝いをさせていただきました。いわば人生のインフラづくりに携われたことは、得難い経験だったと思っています。ウェルスナビが2020年12月に株式上場を果たしたことで、私としても一つの区切りとなり、新たなチャレンジを模索していました。
次も社会に貢献できる仕事をしたい。日本社会をよくしていくために、本来やるべきこと、みんながなかなか取り組めていない日本の課題の本丸に、自分のリソースを注ぎ込みたい――そう考えていたときに、M&Aクラウドからのオファーを頂きました。
M&Aクラウドに昨年、出資したVCのSTRIVEさんから、マーケターを探しているらしいと聞いたのが最初のきっかけです。M&Aクラウドを担当しているSTRIVE 天野さんのチームとは、私も長年のお付き合いがあり、信頼しているので、これは話を聞いてみたいなと。STRIVEさんからも投資を決めた理由などを聞き、ますます興味を持ちました。
――M&A支援のどこにやりがいを感じたのですか?
私は、日本経済が再成長するための活路は、ITスタートアップに資金や人材が集まることで成長が促され、新たな雇用が生み出されていくことにあると思っています。今、多くの大企業が新規事業の立ち上げにチャレンジしているものの、なかなかうまくいかないケースも多い。「だったら、有望なスタートアップを買えばよいのに」という思いもありました。M&Aを通じて、会社という箱ごと動かすことで、社会全体の流動性を高められると感じたんです。
人やモノが動かずに淀んでいる状態は、成長を鈍らせ、停滞をもたらすというのが私の持論です。それを変えていくには、失敗してもいいから流れをつくる。流動性を担保することが、物事を活性化していくカギになると、これまでの経験から感じています。
M&Aの市場の大きさも魅力的でした。上場しているM&A会社の3社全てが、ここ数年ぐらい2桁成長を続けている。そんなマーケット、あまりないんですよね。ブルーオーシャンということでもあり、事業承継の問題を含めて、ソリューションを求めている人がたくさんいるということでもあるなと。困っている人たちの課題解決に貢献できることにやりがいを感じると同時に、大きなTAM(Total Addressable Market:獲得可能な最大市場規模)にチャレンジできること自体にワクワク感を覚えました。
加えて、薄利多売ではないM&A領域は、集客の難易度が高いビジネスでもあるように感じました。私がこれまでマーケターとして培ってきたものを、フルに活かしてチャレンジできる場所だという思いもありました。
「シンプルで柔軟に考える」スタンスに共感

――入社前に業務委託を経験されていますね。
経営陣との相性を確かめたかったのと、自分が本当に役立つかどうかについても感触を得たいと思ったので。
実際に仕事をしてみて、M&Aクラウドの経営陣は、「企業価値最大主義」をお題目として掲げるだけでなく、本当に常に念頭に置いて動いているなと感じました。成果を出すためには、過去の枠組みにとらわれずに柔軟に考える。勝ち筋だと思えることにスパッと打ち手を打てる割り切りのよさもあります。私自身、原理原則に基づいていれば、やるべきだと思ったことは何でもやればいいと考えるタイプなので、気が合いそうだと感じました。
――入社後の印象は?
オープンさ、率直さというのは、とてもよい文化ですよね。経営会議のディスカッションでも、みんな言いたいことを言う。いろんな意見を受け入れつつ、違うことは違うと言える空気もあって、いいチームだなと思いました。
経営会議の議事録も全社に公開されているし、クローズな環境で物事を決めないから、他の部門で何が動いて何が課題なのかも分かりやすい。提案や連携がしやすいです。
若手が多いメンバーの一生懸命な姿勢にも学ぶものが多いですね。日々元気をもらっていますよ。
データベースの基盤づくりと「振り返り」文化の醸成に格闘する日々
――「M&Aクラウド」のプラットフォームに対しては、どこに魅力を感じましたか?
売り手と買い手の間に、思いがけない出会い、従来の仲介事業ではあり得なかった出会いを生み出している点です。事業を売却したい、資金調達をしたいと思っている会社にとっては、当たるべき候補先を探すことがまず難しい。例えば、ある売り手のインタビューをした際に、「なかなかほしい情報が得られず、あきらめかけていたときに、求めていた候補先リストが『M&Aクラウド』にあることを発見して、感動した」と話してくれました。しかも「無料で見られるってこれはいい、ありがたい存在ですね」と。買い手・出資企業のリストを誰でも見られる形で提供していること自体、「M&Aクラウド」の大きな価値だと思います。
――入社から約半年、三井さんが特に注力してきたことを教えてください。
これまで社内にマーケティングの経験者がいなかっただけに、まずデータベースの整備から始める必要がありました。どのようなチャネルからどれだけ流入しているかを可視化し、チャネル別の投資対効果を把握する。またサービス内におけるマッチング数や面談数、メッセージの既読率、面談の承諾率などを追い、どんなパターンが一番成約を創出しやすいかを分析する――そんな基盤づくりをひたすら進めてきた感じです。
M&Aクラウドにとって、成約はもちろんですが「多くの面談体験」をユーザーに提供できることも、価値の一つだと思っています。どのようなアクションが面談を効率よく創出しているのかという分析にも取り組み、解明が進んできました。
もう一つ、私が注力してきたのは、「振り返り」の習慣を社内に根付かせること。チャレンジはもちろん大切ですが、成功にしろ失敗にしろ、一定の結果が見えたら、取り組みを振り返る機会を持つことも同じくらい大切です。そこで、よかった点、悪かった点を整理することで、次のチャレンジをよりよいものにすることができる。行き当たりばったりのチャレンジを続けてしまうと、結局、難しい局面での踏ん張りがきかないんですよ。ここはM&Aクラウドがまだまだ改善できる点だと思っています。
木こりのジレンマという有名な逸話があります。木こりがずっと斧を振って木を切っていて、切れ味が悪くなってくると、誰かに「斧を研げば」と言われる。木こりは、「いや、そんな時間がない」と耳を貸さない。本当は研いで切れ味がよくなれば、もっと効率がよくなるはずですよね。
振り返りも斧を研ぐようなもので、地味だし、みんななかなかやりたくないと思いがちな作業です。そこを月1回からでも少しずつ取り入れるようにすることで、トライ&エラーの精度が高まっていくと思っています。
「また来たくなる」仕組みづくりに成約創出の「解」を求めて

――今後、M&Aクラウドのプラットフォームをどのように進化させたいですか?
まずは、プラットフォームの規模を大きくすること、これに尽きます。次に、毎月多くのユーザーがログインしてくれて、ログイン頻度も高い状態を作る。もちろん、一番重要なのは、「ここに来れば成約できる」「よい相手と面談できる」サービスにすることですが、自分に役立つ記事が読めるとか、ほしいノウハウが得られるとか、「M&Aクラウドにログインすると、何かいいことがある」と感じてもらうことも大切です。このあたりも今後、着手していきます。
――すでに勝ち筋が見えている?
いや、まだまだです。M&Aのプラットフォームに関しては、私は5年くらいをめどに、あるべき姿を見出し、形にしていきたいと考えています。例えば直近では、資金調達希望のユーザー登録がすごい勢いで伸びていて、成約もどんどん決まっている。この冬には資金調達専用のプラットフォームもローンチします。
ここで資金調達に成功し、会社を大きくした起業家たちが、いよいよIPOを目指すか、はたまたM&AによるExitを狙うか――そのタイミングがやってくるのが5年後くらいだと思っています。その時点でニーズにしっかり応えられるサービスになっているように、日々”斧”を研ぎながら、進化させていきたいですね。
本当に毎日コツコツ、地道な作業の繰り返しですよ。よくみんなに「いつ見ても、三井さんはKPI管理シートにログインしていますね」と言われるのですが、スプレッドシートのデータを眺めながら、ここから何か見えてくるものがないかと、ひたすら考えていたりします。
――そんな三井さんの原動力になっているのは何ですか?
難しさが結局、やりがいでもあるんですよね。Webサービスの中には、マーケターに若者の感性が求められるものもたくさんありますが、M&Aプラットフォームにはむしろ社会人としての一定の経験値がなければ難しいと思います。今の私だからこそ、見える打ち手がきっとあるはずです。
私はこれまで3社のスタートアップを経験し、スタートアップに育てられてきた人間です。だからこそ、M&Aクラウドをいわば“日本スタートアップ”におけるM&A部門、資金調達部門として大きく成長させ、日本のスタートアップ全体の発展に貢献していくことが、私の使命だと思っています。
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