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就活WebメディアとEC運営、2社をM&AでEXITした伊藤忠出身の起業家が語る「M&Aを選択する理由」

前回の記事でお知らせしたように、「UPDATE M&Aクラウド」では、M&Aをステップにキャリアのステージを高めてきた起業家たちを紹介する新企画「UPDATE ENTREPRENEUR」をスタートします。

初回に登場いただくのは、就活支援とアパレルECという大きく異なる領域で、スタートアップの共同創業者/取締役を務めた樋口 幸太郎氏。1社目は就活支援業界で広く知られるネオキャリア、2社目は東証プライム上場のアダストリアグループへのM&Aを実現し、今年3社目を始動。ECコンサルティング事業を手がけ、EC経営管理において培ってきた独自の知見を展開しています。

「商社勤務時代の最初の起業から、めぐりめぐって今の事業に出会えたのは、M&Aを活用してきたからこそ」と語る樋口氏に、これまでの軌跡と今後のビジョン、後輩起業家へのアドバイスなどを聞きました。ロングインタビューのため、前後編に分けてお届けします。

「まずは小さく始めよう」。新卒3年目、ブログの立ち上げから起業にチャレンジ

――新卒で伊藤忠商事に入社されています。当時から将来の起業を考えていたのですか?

1985年生まれぐらいの世代だと、高校生から大学生の進路を考え始める時期に、サイバーエージェントの藤田さんやライブドアの堀江さんが起業家として話題になっていた時期でもあり、「こういう生き方もあるんだな」と意識するきっかけになった人は多いと思います。僕自身も強烈な憧れがあったというわけではないものの、何となく意識はしていたように思います。

とはいえ、いきなり起業する自信はなく、まずは就職したんですが、当時の総合商社って「ビジネス創造」ということを前面に打ち出し始めていた時期で。特に伊藤忠商事は、子会社IPOするケースが目立っていたんです。カブドットコム証券、FXプライム、イー・ギャランティとかですね。その影響もあり、自分も金融部門を志望して、入れてもらうことができました。

――就活情報サイトの「Unistyle」を立ち上げたのは2011年。入社3年目ですね。

入社1年目が終わるタイミングで、「この環境で社内起業するポジションまで上り詰めるのは、かなり時間がかかりそうだな。優秀な人材の中で、辛抱強くやっていけるかな」と考え始めました。そこで、まずは小さく始めてみようと思い立ち、入社2年目ぐらいから大学時代の後輩で野村證券に勤めていた友人と2人で、週末に会って起業の話をするところから始めました。

起業のネタについては、できること・興味があることという観点から「就活」「金融」、そして超高齢化社会は当時も言われていたので「介護」、これらの領域に絞って考えてみることにしました。その中で手軽に着手できそうなこととして、「ブログからでも始めようか」と書き始め、実際に立ち上げたのがFXと就活ブログでした。

FXの方は途中で止めたんですけど……あれ、やっているうちに嘘ついちゃうんですよね(笑)。自分がどのタイミングで何を売ったとか買ったとか、読者を引き付けようとするあまり、ストーリーを創作するようになってきちゃって。これは精神衛生上よくないなと。

その点、就活ブログは自分のリアルな経験ベースで行けました。僕、就職留年していて、就活経験は人の倍ありましたから。

当時、「リクナビ」「マイナビ」のような企業側の募集情報ベースの就活サイトはあっても、学生目線、それも東大早慶みたいな学生目線の情報サイトってなかなかなかった中で、そこを狙った人気ブログがいくつか出てきていたんです。

金融畑のコンビで始めた就活メディア。メディアM&Aブームに乗り、5年でEXITへ

――「Unistyle」を伸ばせるめどが立ってから、伊藤忠商事を退職された形ですか?

はい。匿名の個人ブログで始めて、アフィリエイトで月10万くらい売り上げが上がるようになり、これは行けそうだなというところで本格的に事業化を考えて、準備を始めました。個人ブログとして立ち上げていたものをWebメディア化するためにサイト作成を外注したり、会社に勤めながら体制を整えていきました。

Unistyle」は、実は有料会員サイトとして立ち上げたんです。伊藤忠商事と野村證券のコンビで、インターネットビジネスのことなんてよく分からず、最初から収益が上がるビジネスモデルにするなら有料サイトだろう、みたいな。

始めてすぐ売上は立ったものの、「これだとスケールしそうにないな」「そういえば、SEOってあるから会員登録なしで無料で読めるコンテンツ部分もないと」と方向転換しました(笑)。今振り返ると「なんて無知だったんだ」と恥ずかしく思いますが、当時は必死でやってなんとか乗り切れたなって感じですね。

――Unistyleは創業5年目で、ネオキャリアさんにM&Aされています。

M&Aを考え始めたのは4年目です。業績は比較的順調に伸びてきて、10年目には売上3億円くらいにはなりそうという見通しもありました。一方で、僕らは就活ビジネス自体、「勝てそうなマーケットだから」という理由で始めたので、ここで何かのビジョンを達成したいといった強い思い入れもなかったんです。

ちょうどその頃、WebメディアのM&Aが流行り始めていて。就活系でも、上場企業によるM&Aの事例が何件かあり、「近しい領域でこれだけの金額で売却できるなら、僕らだったらもう少し行けるんじゃない?」とリアルに話をしていました。

一社、上場企業からお話をいただき、決裁の途中でブレークしてしまったんですが、そこから本格的にM&A先を探し始めました。

――初めてのM&Aで、苦労された点などはありますか?

特に苦労というほどのことはなかった気がします。業績も出ていましたし、絶対に売りたいというよりも、希望の金額で受け入れてくれる先があれば、というスタンスだったので。

――デューデリジェンスもスムーズに?

創業当初から、会計はきれいにやっていました。僕らはインターネットビジネスでは素人だった反面、僕自身は伊藤忠商事で投資管理系をやっていて、簿記の資格も持っていましたし、相方は野村證券でしたし。毎月5営業日ごろに会計を締めるとか、当初から当たり前のようにやっていたので、あまり刺される要素がなかったのかもしれません。

飲み会代を会社の経費で落とすとかはやっていましたけど、それも月20万円までとか、事業に必要なものとして説明のつく範囲内でした。実際に今、経営コンサルの仕事もあり、いろいろなスタートアップの話を聞いてみると、僕らはかなりきれいにやっていた方だなとは思います。

クリエイター気質の代表を支える!ナンバー2に徹し、経営管理を究めた2社目

――2016年にUnistyleを売却された後、2019年には子ども服ECブランドのオープンアンドナチュラルにCOOとしてジョインされています。就活サイトからアパレルECと、大きく異なる領域でのチャレンジですね。

オープンアンドナチュラル創業者の佐藤君は、「Unistyle」の初期ユーザーで、就活の面接講座などで何度か会う機会があり、当時から「優秀だな」と思っていました。僕としては、アパレルECに興味があったというより、彼の仕事を手伝いたいという思いでジョインした形です。

――どんな経緯でジョインを決めたのですか?

佐藤君はやはり伊藤忠商事に就職した後、子ども服のECモールをやっているスタートアップに転職したんですが、その間もメールのやりとりは続けていました。いよいよ彼が起業するというときに、僕はちょうどUnistyleを売却したばかりだったので、「ぜひ出資したい」と。最初はエンジェルの外部株主として参加しました。

その後、共同創業者の方が抜けたこともあり、彼一人では回し切れなくなってきたタイミングで、僕が経営に加わることになりました。彼は商品企画やブランディングに抜群のセンスを持っている反面、オペレーション管理や会計といった部分はあまり得意ではないタイプ。そこを僕が巻き取って、彼にはクリエイティブな業務に集中してもらえれば、ぐっと伸ばせそうだなと。

ブランドとしては、すでにポテンシャルが証明されつつある時期だったので、一定の勝算はあったんです。今、振り返っても、いいタイミングでジョインさせてもらいました(笑)。

――それぞれが得意分野で力を発揮できる関係性ができたわけですね。

商品やブランドの世界観は代表がつくり、僕はオペレーション管理や組織づくりを担当して、PL/BSに責任を持つ。もちろん、重要事項については二人で話し合いますが、最終的な決定を下すのは代表です。僕自身、1社目ではトップを経験していますから、ナンバー2に期待される役割はどこまでか、考えながら動くようにしていました。

最終決定を下すことには、もちろん怖さもあるのですが、それが経営者としての面白さ、醍醐味でもあると思うんです。なので、ナンバー2は、トップが最良の決定を下せるように、複数プランを考えて準備を整え、決定後は粛々と実行していく。それはそれでやりがいのある役割だと思います。

ECビジネス急成長の秘訣は、在庫を滞留させないオペレーションにあり

――アパレルのECは苦戦するケースも多い中、オープンアンドナチュラルは順調に業績を伸ばしてきました。成長の秘訣は?

これは2つあると思っていて、1つは商品の企画力。当たり前の話ですが、当たる商品が出なければ、売り上げは伸びないですから。消費者がほしい商品を作るという最も当たり前のことが重要で、マーケティングチャネルをハックするなどの小手先のテクニックが先行していると、長続きするのは難しいと感じています。その意味で、オープンアンドナチュラルでの成功要因の8割は、代表が市場に合った商品を提供できたことにあると思っています。

残りの2割が経営含めたオペレーション設計と管理で、端的にいうと、外してしまった商品をいかにキャッシュにして回収するか。うまく回収できてこそ、次の商品群を幅広く展開でき、その中からまたヒット商品が生まれてきます。逆に回収がスムーズにいかないと、次に網を張れる面積が減ってしまう分、当たりの幅も小さくなるんです。

アパレルに限らず、小売りは仕入れを増やして機会損失をなくせば、売り上げも営業利益も伸びやすい。一方で、在庫が滞留してしまうと、営業キャッシュフローは悪化します。これが結局、死の始まりなんですよね。僕らは「仕入れから6カ月以内に99%消化」をルールにして、撤退する商品はセールで売り切っていました。

――伺っていると、やはり代表と樋口さんのコンビネーションが絶妙だったのだなと感じます。オープンアンドナチュラルに関しては、IPOもお考えになっていたのかなと思いますが。

考えていて、実際、準備もしていました。ショートレビューは済ませて、監査法人とも契約して、N-2に入るというあたりで、最終的にはM&Aを選択した形です。ここでも決断は代表に委ね、僕はどちらでも行けるよう、諸々のアレンジをしていました。

――M&Aを選択されたのはなぜですか?

子ども服のマーケットで、当時の体制で運営し続けていった場合、上場はできても、その後の成長戦略を描けるかというと、なかなか難しいのではという判断です。実際、2つ目のブランドを立ち上げてはみたものの、思ったように伸びなくて。

いろいろなスタートアップを見ていると、IPO時が株価のピークで、後は伸び悩むパターンってありますよね。僕や代表も、そういう苦労話を間接的に聞くこともあり、「リアルだな」と。

後編に続きます!

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