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M&A用語だらけの東京卍リベンジャーズ、東京卍會・愛美愛主M&A編

皆さんこんにちは。経営企画本部の藤原です。今回はいつもと少し切り口を変えて、失敗M&A事例や、失敗を避けるためにはどうすればよかったのか?という点について『東京卍リベンジャーズ』を参考に見ていきたいと思います。

はじめに

同作品は「Simeji presents Z世代トレンドアワード2021」によると、総合7位にランクインしており、かなり有名な作品です。

しかし本作についてはこれまで僕もノーチェックでして、小6の娘からしばしば聞かされていてタイトルだけは知っている、という状況でした。

当社代表取締役CEO及川厚博によると「この作品はM&Aを題材にしているから従業員は勉強のために読んだ方が良い」ということでしたので、さっそくKindleでまずは1〜5巻までまとめ買いして読んでみたところ、確かにM&Aを扱った作品でしたので、同作に学ぶ典型的な失敗M&A事例とその回避策として解説してみたいと思います。

なお、同作品は現在最新刊である第25巻が2021年12月17日に発売されております。今回の記事は1〜5巻までのかなり序盤の出来事を扱った内容ではありますが、未読の方にとってはネタバレになりますのでご注意ください。また、同作を引用する際には以下の引用要件を全て満たすよう留意して執筆しています。

 a 引用部分が公表された著作物であること
 b 引用部分と自己の著作物の区分が明瞭であること
 c 自己の著作物が「主」であり、引用部分が「従」であること
 d 「引用の目的上正当な範囲内」であること
 e 出所を明示すること
 f 改変など、引用部分の著作者人格権を侵害しないこと

https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/chosakuken/index/inyou/#i

相手と同じ絵を描く前に無理矢理買収してしまった

さすが「M&Aを題材にした作品」ということもあり、第3巻の段階で早くも敵対的買収のシーンが登場します。

主人公である花垣武道氏が後に所属することになる東京卍會(読み「とうきょうまんじかい」)が、競合である愛美愛主(読み「めびうす」、以降「メビウス」と言う)をM&Aする場面がそれです。

引用元:『東京卍リベンジャーズ』第3巻P.36-37より

同場面において東京卍會ナンバー2のCOO龍宮寺堅氏がメビウスを「傘下とする」と語っていることから、メビウスの8代目CEOである長内信高氏より発行済み株式100%を東京卍會が半ば強引に譲受した取引であると推察されます。

M&Aも人と人との交わりですから、このような敵対的買収においては、買収される側の気持ちがとても重要です。少なくとも買収する側とされる側が未来に向けて同じ絵を描けていないとうまくいきません。特に今回は急成長中のスタートアップである東京卍會が、既に8代目のCEOを輩出している老舗組織であるメビウスをM&Aするのですから、より気を遣う必要があります。

本件はそのような準備期間がなく、東京卍會創業者でCEOの佐野万次郎氏による回し蹴り一発で半ば強引に長内信高氏から株式を取得しており、このページを読んだだけで前途多難なM&Aとなることが予想できます。

案の定、後にこの子会社化に反発する人物が現れます。メビウス取締役でナンバー2と目されていた半間修二氏です。彼は部下100名を引き連れて東京卍會傘下のメビウスから独立。芭流覇羅(読み「ばるはら」、以降「バルハラ」と言う)の副代表として活動を開始し、東京卍會内部からの組織崩壊を画策することになります。

引用元:『東京卍リベンジャーズ』第3巻P.154-155より

また、メビウス8代目CEOで本M&Aを決断した長内信高氏も東京卍會幹部からの粛清に遭い、組織から引退させられ、後に大工に弟子入りすることになります。

結果的に、本件は関係者全員が幸せにならないM&Aになってしまいました。

どうすればよかったのか?

それでは、東京卍會ならびにCEOの佐野万次郎氏が実際にどうすればこの敵対的買収がうまくいったのかを考えてみたいと思います。

デーティング投資でシナジーを見極める

初回面談でいきなり100%買収のクロージングまで実現してしまうのではなく、やはり準備期間を設けた方がM&Aの成功確率は高くなります。例えば、この記事で弊社代表及川も述べている「デーティング投資」はシナジーの実現可能性を見極める上でかなり有効です。

デーティング投資とは、いきなり100%で買収するのではなく、いったんマイノリティー投資をしてお互いの相性を確かめるデーティング期間を1年間ほど設ける投資のことで、弊社ではこのように呼んでいます。

東京卍會の佐野万次郎氏は、メビウスとの初回コンタクトにおいては回し蹴りではなく、10〜20%程度のマイノリティー出資の提案にとどめるのもひとつの手です。メビウスCEOの長内信高氏やCOOの半間修二氏と腹を割って話し合い、どのような絵を一緒に描いていけるかをじっくり協議すれば、成功する可能性は十分にあります。

「いやぁ〜、東京卍會は勢いがあるとは言え、まだまだ立ち上がったばかりのスタートアップですから、メビウスさんみたいに組織がしっかりしていて優秀な人材も多いのは羨ましいです。ぜひ長内さんや半間さんから組織開発のノウハウを勉強させてください。」

とでも言うべきであって、買収する側のCEOが相手のCOOに対して「お前が裏でネチネチしてるキモ男?」などというようなことは口が裂けても言ってはいけません。

お互いの人材を出し合い理解を深める

組織が異なれば仕事への取り組み方にも違いがあって当然です。東京卍會はイケイケのスタートアップでありながらコンプライアンスには随分と気を遣っているのに対して、老舗のメビウスの方がむしろ法令を逸脱してしまう場面があり、東京卍會COO龍宮寺堅氏もその点についてメビウスCEOの長内信高氏に対して法務DDで指摘するシーンがあります。

引用元:『東京卍リベンジャーズ』第3巻P.33より

しかし「だからお前は負けたんだ」などと言って突き放してしまうのではなく、お互いが相手のことを理解するための活動をすれば成功の可能性が高まります。

例えば、それぞれの組織が人材を出し合って、ひとつの共同プロジェクトを推進するなどの活動によって、お互いの仕事に対する取り組み方の差異を肌で感じることはとても有効です。

このような活動においては、どうしても相手の悪いところが目に付いてしまいますが、常にお互いへのリスペクトを忘れずに、未来に向かって活動することが肝要です。少なくとも相手の人材を「スパイではないか?」と疑い、人けのない会議室で証人喚問を開催してはいけません。

引用元:『東京卍リベンジャーズ』第5巻P.172-173

共通のビジョンを設定して従業員と対話する

例えば東京卍會とメビウスが共に手を焼いている強力な競合相手が市場に存在する場合、両社が手を取り合って一致団結することでその相手と伍して戦えるようになるかも知れません。共通の敵を設定することは、このような急造チームにとって短期的には効果を発揮します。

しかし、本作ではそのような競合相手があまり描かれていません。

また、競合相手だけでなく、それぞれの組織の存在意義(ミッションやビジョン)が不明確なまま両社のM&Aの話が進行していきます。もしかしたら6巻以降にそのような記載があるのかもしれませんが、少なくとも5巻まででは、それを読み取ることはできませんでした。

このように買い手側・売り手側双方のミッションとビジョンが不明確なままM&A案件だけが進行していくのは大変よろしくない状況です。

改善のヒントがあるとすれば、第1巻のラストに東京卍會CEOの佐野万次郎氏が自組織のビジョンのようなものを語るシーンがあります。

引用元:『東京卍リベンジャーズ』第1巻P.182-183

この直前のシーンでCEO佐野万次郎氏は不良市場が世の中的に既に時代遅れでありシュリンク傾向であることを認めています。

であるならば、そのシュリンク市場の中で、自分たちが生き残っていくために、もっと言うと逆に不良が格好良いと言われる時代を取り戻すために、東京卍會とメビウスのM&Aが今こそ必要なんだと、いがみ合ってる場合じゃないんだと、両社の従業員にしっかりと示せたならば、また違った展開もあったと思います。

まとめ

ただでさえM&Aというのは慣れた組織であっても成功させるのがとても難しい活動です。ですから東京卍會にとって初めてのM&Aが競合のメビウスに対する敵対的買収だったというのは、なかなかにハードルが高い取り組みだったと言えます。

東京卍會は今回のM&Aの失敗(おそらくそう言っても差し支えないレベルで組織が崩壊しました)から何を学ぶかが今後の成長のためには重要になってくると思います。

僕はまだ5巻まで読了した段階ですが、もう少し読み進めて、この組織がどのように学び成長していくのか、そして次のM&A(後に「血のハロウィン」と呼ばれるハードネゴシエーションが行われたディール)ではどのような展開が待ち受けているのかとても楽しみです。

次回、M&A用語だらけの東京卍リベンジャーズ、東京卍會・芭流覇羅M&A編で皆様と再度お目にかかれたら嬉しいです。

東京卍リベンジャーズの本編ストーリーが気になる方はぜひ購入をご検討ください。アフィリではない純粋リンクを添付しておきます。

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