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起業家必見!2022年上半期主要スタートアップM&Aに選ばれた5件を考察

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2022年を「スタートアップ創出元年」と位置づける岸田内閣。8月1日には、山際経済再生担当大臣が、初代スタートアップ担当大臣を兼務することが発表されました。国のスタートアップ振興策も、いよいよ本格化することが期待されます。

そんな中、8月5日、スタートアップ情報プラットフォーム「INITIAL」の『Japan Startup Finance』の2022年上半期レポートが公開されました。本記事では、同レポートにおいて「主なスタートアップの被買収」として発表された5件のM&Aにフォーカス。各案件の概要と、高評価の獲得に至ったポイントを探ります。

ネオマーケティング×Zero:AI設計力でマーケ支援をパワーアップ

買い手:株式会社ネオマーケティング
売り手(対象会社):株式会社Zero
株式譲渡日:2022/1/20
譲渡価格:6億円

2019年11月の設立以来、顧客に対してAIアルゴリズムの設計・実装やソリューション提供を行ってきたZero。2期目にあたる2021年10月期は、売上高が前年比125%増を記録しました。昨今のAIブームの中で急成長を遂げているスタートアップです。

M&A前のZeroの株式は、創業者の加藤工汰氏が100%保有。創業以来、資金調達を経ることなく、M&Aイグジットに至ったようです。営業利益は、1期目の2020年10月期が5,100万円、2期目の2021年10月期は1億400万円。順調に業績を伸ばし、2年で6億円の評価額を獲得しています。

一方、買い手のネオマーケティングは、東証スタンダード市場に上場。「生活者起点」を掲げ、独自のフレームを活用したマーケティング支援を展開しています。同社の強みは、クライアント企業のマーケティングプロセス全般をサポートでき、迅速にPDCAを回して結果に繋げられる点とのこと。累計の取引実績は2,500社を超えています。

今回のM&Aを実施した理由について、ネオマーケティングは1月のプレスリリースに「同社のグループ化により、クライアント企業のマーケティング活動やDX化におけるAI活用を推進し、データ分析における効率化や予測精度を高めることが可能」と記載。さらに、5月に発表した2022年9月期 第2四半期決算説明資料では、Zeroの今後について、「企業が既に保有しているデータ」の「収集から整理、利活用を支援」していくとしています。

昨今、多くの企業でDXが叫ばれる中、需要予測などに役立つ貴重なデータが社内のさまざまな部門に散在していることが課題に浮上しています。Zeroを仲間に迎え、こうした新たな課題に応えられる体制ができたことは、ネオマーケティングが掲げるマーケティングの「トータルサポート」の強化につながるとの期待があるようです。

なお、ZeroのWebサイトを見ると、2022年8月5日現在、同社の代表はネオマーケティングの代表である橋本光伸氏となっています。5月に発表されたネオマーケティングの決算説明資料には、創業者の加藤氏が代表と記載されているため、その後に代表交替があった模様。加藤氏の現在については情報がありませんが、次のキャリアに向かっている可能性も考えられます。

※本件は、M&Aと資金調達のマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」を介して成立した案件です。

AI inside×aiforce solutions:画像認識AIと需要予測AIのエキスパートが合併

買い手:AI inside株式会社
売り手(対象会社):株式会社aiforce solutions
株式譲渡日:2022/5/2
譲渡価格:16.4億円

2018年7月設立のaiforce solutionsは、「AIの民主化」を掲げ、AIの未経験者でもビジネスにAIを活用できる自動機械学習のソフトウェアを開発。得意分野は、数値データに基づいた需要予測AIです。プログラミングの知識がなくても、経営者や現場が抱える課題に対して解決策を導き出せるAIデータ分析自動化ツール「AMATERAS RAY」を展開しており、併せてAI人材の実践教育プログラムも提供しています。

同社は、2021年6月期は、約1億3,500万円の営業損失を計上しており、技術・製品開発に積極投資している段階であることがうかがえます。今回のM&Aにおける評価額16億4,000万円には、培ってきた技術や人材、顧客との関係性などをベースにした将来期待が加味されているものと推測されます。

一方、今回、aiforce solutionsを吸収合併したAI insideは、2015年8月に設立し、2019年12月に東証マザーズに上場(現在はグロース市場)。「グローバルNo.1のAIプラットフォーム」を目指してAI開発・運用基盤を提供しており、特に画像認識による物体検知を得意としています。手書き文字を含む紙文書の内容を読み取ってテキストデータへの転換や書類の自動仕分けを行うAIプログラム、画像認識AIなどをノーコードで開発・運用できるサービスなどを手がけています。

今回のM&Aの理由に関して、AI inside代表取締役社長の渡久地択氏は、プレスリリースで「当社が注力してきた画像認識AIと同等に重要だと考えられるのが、数値データを扱う予測AIです。そしてこの技術・ビジネスにおいてのベストカンパニーが、aiforce社」とコメントしています。

また、aiforce solutions代表取締役社長の西川智章氏のコメントにも、「AI inside社とaiforce社のAIプロダクトとDX教育サービスは、お互いに補完関係にある」とあります。画像認識を得意とするAI inside、数値データからの分析/予測に強みを持つaiforce solutionsが互いの専門分野に魅力を感じ、今回の合併へと至ったようです。

AI insideの2022年3月期の決算説明資料には、2023年3月期の業績予想について、「aiforce solutionsの株式の取得及び吸収合併による売上高増により、前年比+25.5%の増収を見込む」とあります。aiforce solutionsは、サーティワンアイスクリーム、株主でもあった住友商事や七十七銀行などを顧客に抱えており、両社は将来クロスセルを図っていくことで、一層のシナジー効果が期待できそうです。また、両社の専門技術を掛け合わせ、新たなサービスの開発・提供を図っていく展開もあるでしょう。

aiforce solutionsの創業者である西川氏は、M&A前には58.84%保有していた同社の株式をすべて手放した一方で、合併後も引き続きAI insideで活躍している模様。AI insideの公式note記事によると、合併後の5月30日時点の肩書は、AI insideのStrategic Consulting Unit VP 兼 AMATERAS Unit VPとなっています。

システム・ロケーション×Inspiration:自動車販売支援で独自テックを持つ2社がタッグ

買い手:システム・ロケーション株式会社
売り手(対象会社):Inspiration株式会社
株式譲渡日:2022/4/15
譲渡価格:8.2億円

Inspirationは、中小の自動車販売店のニーズをとらえ、使い勝手のよい業務支援サービスを開発する企業です。誰でも簡単にHPが作成できることを訴求した「自動車ディーラーWEBシステム」、WEB通話ツールを搭載し、提案書を手軽に作成できる「オリジナル営業資料作成システム」、スマホから簡単に大型モニターへ通信できる「中古車デジタルサイネージ」などを提供しています。

一方、買い手のシステム・ロケーションは、東証スタンダード市場に上場。自動車の資産価値を独自に分析・算出するサービスの提供により、販売店をはじめとした自動車関連事業者のニーズに合わせた営業支援を行っています。

今回のM&Aの狙いに関して、システム・ロケーションのプレスリリースには「当社グループとInspirationは、広義では同じ業界に属しているものの、事業領域や顧客領域、また商品特性は、それぞれ個別に独立していることから、2社がそれぞれに有するネットワークやノウハウを組み合わせることで、これまで以上に幅広い事業領域、顧客領域での展開、また新商品の開発を行うことが可能」と記されています。若者の自動車離れなどが進む中、互いの顧客ネットワークにアプローチでき、既存顧客に提供できる価値を高めることも可能なパートナーに出会ったということのようです。

なお、本件もM&Aと資金調達のマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」を介して成立した案件です。「10年以上前から、経営ビジョンを共有でき、シナジー効果を発揮できる理想の相手を探し続けていた」というシステム・ロケーション 代表取締役社長の千村岳彦氏と専務取締役の前田格氏がInspirationに出会い、成約に至った経緯については、ぜひ下記のインタビューをご覧ください。

ミクシィ×ラブグラフ:1,000万人超のユーザー基盤を生かし、マネタイズ強化

■案件概要
買い手:株式会社ミクシィ
売り手(対象会社):株式会社ラブグラフ
株式譲渡日:2022/3/18
譲渡価格:8.3億円

ラブグラフは、家族やカップルの外出にプロのカメラマンが同行し、写真撮影するサービス「Lovegraph(ラブグラフ)」を展開。M&A発表時の累計撮影件数は37,000組に上ります。全国でプロカメラマンを採用し、撮影場所や撮影シーンなど顧客の細かいニーズに対応することで多くのファンを獲得してきました。

一方のミクシィは、子どもの写真や動画を祖父母や親戚など招待した家族だけにリアルタイムに共有できるアプリ「家族アルバム みてね」を運営。両社は2020年4月に資本業務提携を締結し、同年9月には「みてね」とラブグラフの出張撮影サービスがタッグを組む形で、新サービス「みてね出張撮影」を開始しました。

感染症の拡大を受け、「七五三など家族の行事やイベントをプロのカメラマンに撮影してもらいたいけれど、フォトスタジオでの撮影は不安」という声がある中、「みてね出張撮影」は、室内外を問わず撮影できる点が強み。この出張撮影サービスを始めた効果もあってか、「家族アルバム みてね」の利用者数は、2021年3月には1,000万人を突破しています。

今回、ラブグラフは約2年のデーティング期間を経て、ミクシィへのグループインに踏み切りました。その理由について、ラブグラフ創業者でCEOの駒下純兵氏は、「みてね」との連携強化によって「より大きな可能性に挑戦できると考えたため」とコメントしています。「みてね」は特に海外のユーザー数の増加率が高く、直近では全体の約3割を占めるまでに拡大。グループインにより、ラブグラフはフォトグラファーの採用・育成への積極投資を図っていくと同時に、将来の海外展開も視野に入れているようです。

一方のミクシィ側には、ラブグラフとの関係強化により、「みてね」のユーザー基盤を活用したマネタイズ力を高めたい狙いがあると推測されます。「みてね」は、基本的な機能は無料で提供し、追加機能を利用したいユーザー向けには有料版を用意している、いわゆるフリーミアムのサービス。2015年のローンチ後、ミクシィは早期の収益化に向け、「みてね経済圏の拡大」を掲げてきました。

有料版のユーザー拡大に加え、M&Aや資本業務提携を通じたマネタイズポイントの拡大にも取り組み、2019年6月にはフォトプリント事業を展開する株式会社スフィダンテを完全子会社化。2022年1月には、夜間・休日の自宅往診サービス「コールドクター」を提供する株式会社コールドクターと資本提携し、「みてね」ユーザーを対象にした往診アプリ「みてねコールドクター」を展開しています。

今回のラブグラフのグループインも、こうした流れの一環です。写真に関わるサービスである「ラブグラフ」は、「みてねユーザーを活用したマネタイズ強化」というミクシィの課題にまさにフィットしているうえ、2年間のデーティング期間を通じて相性のよさも確認できていたことから、65.6億円という評価獲得につながったようです。

セレス×Next Paradigm:女性ターゲットのD2C間でシナジー創出を狙う

買い手:株式会社セレス
売り手(対象会社):株式会社Next Paradigm
株式譲渡日:2022/5/12
譲渡価格:9.1億円

2018年7月設立のNext Paradigmは、フェムテック(女性が抱える健康の悩みを解決するテクノロジー)領域で急成長中のスタートアップです。一般には避妊薬として知られているピルが、月経前症候群や月経困難症の改善にも効果が認められる点に着目。ピルの処方をオンライン診療で受けられるサービス「エニピル」を展開しています。「エニピル」は、2020年9月のローンチから9カ月で月商1,000万円を突破しました。

Next Paradigmは2021年8月、株式投資型クラウドファンディングで資金調達を実施し、2,960万円を個人投資家などから調達しています。そこから約9カ月でM&Aイグジットに着地し、リターンが2.69倍になったことも話題を呼びました。

Next Paradigmの創業者である大浴拓也氏は、連続起業家(シリアルアントレプレナー)です。大学入学の翌年に同社を設立し、当初はオフィス向けの書籍のリース事業を立ち上げました。同事業は、ローンチから3カ月で上場企業など30社に導入された後、別会社へ売却。2020年から、現在のエニピル事業に取り組んでいます。

「エニピル」の立ち上げにあたり、大浴氏は当初からM&Aイグジットを想定していた模様。クラウドファンディング時の将来計画には「202X年 M&Aイグジット」と記載されています。オンライン診療に注目した背景には、アトピー性皮膚炎を持つ自身の経験があったようですが、その中でもフェムテック領域でのサービス立ち上げを決めた裏には、「女性」を共通項とするさまざまな企業がM&Aの相手先となり得ることが念頭にあったかもしれません。

一方、買い手のセレスは、日本最大級のポイントサイト「モッピー」を運営する東証プライム上場企業。「モッピー」やアフィリエイトプログラムなどのモバイルサービス事業が売上の約7割を占めています。「モッピー」のアクティブユーザーは392万人で、会員の約6割が20~30代。「エニピル」の対象世代に当たります。

セレスは本M&A実行の理由として、今年5月に発表した2022年12月期 第1四半期報告書の中で、「中期経営計画2026において当社グループの重点事業の一つとして掲げているD2Cの成長加速」を挙げています。

セレスは現在、美容液や美容サポート食品など、女性をターゲットにした商品をインターネットで販売するD2C事業に力を入れています。「エニピル」とはターゲットが重なっているだけに、今後セレスの顧客基盤やマーケティング力を活用していくことにより、「エニピル」ユーザーの拡大が期待できます。「エニピル」のようなユニークなサービスを加えられることは、セレスのD2C事業全体にとってもプラスとなることでしょう。

なお、Next Paradigmは今回のM&A後、「株式会社サルース」に社名変更しており、本社もセレスと同じ世田谷区用賀に移転。代表も創業者の大浴氏ではなく、セレスの取締役であり、化粧品D2C事業を手がけるグループ会社、ディアナの代表でもある志賀勇佑氏に替わっています。

大浴氏の現在の動向については情報がありませんが、おそらく今後もその稀有な起業の才能を活かして活躍していくのではないでしょうか。

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